国際環境NGOグリーンピースは、「中国漢方薬草:健康の妙薬、それとも農薬カクテル?」と題するレポートを発表した。中国で65の漢方薬草商品を調べた結果、51種類の残留農薬が検出されたことを明らかにした。
この調査は、2012年8月~13年4月に中国の9つの都市で実施したもの。9つの店舗で、クコやハニーサックル、菊、サンシチニンジンなどの薬草を購入し、農薬が残っていないかどうかを調査した。確認された51種類の残留農薬のなかには、中国で使用が違法であるはずの農薬も6種類(ホレート、カルボフラン、フィプロニル、メタミドホス、アルジカルブ、エトプロポス)、26商品から見つかっている。
世界保健機関(WHO)が「極めて有害」「有害性が高い」と指摘する農薬のうち10種類もまた、26商品で検出された。「極めて有害」(Ia)な農薬は、アルジカルブ、エトプロポス、ホレートの3種類。「有害性が高い」(Ib)とされるのは、カーボフラン、シフルトリン、メタミドホス、メチダチオン、メソミル、オメトエート、トリアゾホスの7種類だ。
残留農薬の濃度も大きな問題。たとえば殺菌剤に使われるチオファネートメチルは、サンシチニンジン、ハニーサックルといった薬草の中に、欧州連合(EU)が定める残留農薬基準のそれぞれ500倍、100倍という高い濃度で検出された。
残留農薬が含まれる食品を摂取し続けると、体内に有害化学物質が蓄積される可能性がある。農薬による慢性中毒は、集中障害やホルモン攪乱、生殖機能異常などの被害を及ぼしかねない。グリーンピースによると、世界中の年間農薬生産量は00~09年の10年間で倍増しており、50年までは年間約3%の割合で増える見通しだ。
「中国の漢方薬草は、世界中で健康食品の原料として愛され続けている。人々に危害を与えるのではなく、癒やしてくれるもの。だからこそ無農薬であってほしい」とグリーンピース・東アジアの有機農業担当者は言う。
こうした事態を懸念してグリーンピースは、中国政府に対し、農薬使用の規制を強化すること、農薬削減計画を策定すること、有機農業の拡大のために十分な資金的援助を行うことなどを訴える。また、漢方薬草を生産する企業にも、使用するすべての農薬の種類と使用量、農薬の削減計画を公開するよう求めている。