今回取り上げるのは、社民党、みんなの党、生活の党、みどりの風の4党。国際協力について、断トツで多くの公約を掲げたのは社民党だ。政府開発援助(ODA)予算を国民総所得(GNI)の0.7%(現在は0.2%)に増額すること、各省庁に分かれているODA行政を一元化すること、国際的な税逃れを防ぐ協力体制を構築すること――など、理想的な内容が盛りだくさん。みんなの党は、地球環境問題や食糧危機、貧困撲滅などへのODAの活用を強調する。
■社民党
社民党は「参議院選挙公約」で、国際協力について多くの項目をラインアップした。質、量的にも充実度は群を抜く。
・集団的自衛権の行使を可能にするための憲法解釈の変更に反対する。自衛隊を海外派遣するための恒久法の制定に反対する。
・海賊問題への対処は、海上保安庁の機能を強化したうえで、警察力(海上保安庁)を主体とするものに組み換える。
・イラク戦争への日本の協力過程の是非を公式に検証する委員会を国会に設置する。
・安全保障理事会のあり方を見直すなど、国連の民主的改革を推進する。
・ODA予算をGNIの0.7%に増額。ODAを途上国の人々の生活向上や自立に真に役立つものに改革する。
・ODAの質を確保して国際社会の信頼を得るため、途上国の開発政策を尊重し、ODAの説明責任を強化する。また他の援助国や国際機関、NGOなどとも協調して援助する。
・世界の貧困を2015年までに半減することを掲げた国連の「ミレニアム開発目標(MDGs)」の実現を推進。また、2016年以降の開発目標・枠組み(ポストMDGs)作りための国際交渉で、日本がリーダシップを発揮できるようにする。
・ODAを「人間の安全保障」重視に転換する。
・人権の視点を援助の基礎に据える「権利ベース・アプローチ」(RBA、経済的・社会的・文化的権利を含む人権の概念を中心に据えて開発すること)をODAの理念として採用する。
・ODAの目的や役割を定める「ODA基本法」を制定。各省庁に分かれているODAを一本化し、効率的な開発援助行政の仕組みを整える。
・海外の大規模災害への緊急援助や、途上国の開発支援のための協力などに積極的に取り組む。PKOへの参加は、憲法の枠内の人道的な活動に徹する。
・アフガニスタンや南スーダンへの支援は、非軍事・文民・民生を原則とし、人道面の支援に積極的に取り組む。
・アジアでエイズ患者・感染者が急増していることから、日本がワクチンや根治薬の開発などの研究分野で積極的な役割を果たす。
・国家間の法人税引き下げ競争、国際的な税逃れを防ぐ協力体制を構築する。
■みんなの党
みんなの党は「アジェンダ」で7つの政策分野を掲げた。外交政策の内容は具体的で多岐にわたる。
・国際平和に貢献するため、自衛権の行使の範囲や限界などを法律で明確化する。
・「人間の安全保障」(環境破壊、人権侵害、紛争、貧困などの脅威から、個人を守るべきだとする概念)の観点から、地球環境問題、食糧危機、水不足、教育、医療・福祉、貧困撲滅の分野で、ODAなどを使って人的・技術的・資金的に貢献する。
・日本の安全保障理事会常任理事国入りも含め、国連改革を実現。日本人の国連職員を増やす。
・インド洋やマラッカ海峡の海賊・テロ対策のために、海上保安庁や国際協力機構(JICA)によるODAで各国の海上保安機関の能力向上に貢献する。
・平和構築・平和維持を外交政策の柱として、国連の人道援助活動や平和維持活動(PKO)に積極的に参加。世界の紛争地の和平仲介や調停に取り組む。
・難民保護法を制定し、難民(政治亡命者)に対する保護を充実させる。
■生活の党
小沢一郎代表率いる生活の党は、政策パンフレットで8つの政策分野を掲げた。この中で、国連憲章や日本国憲法前文の国際協調精神に則った安全保障基本法を制定し、PKO参加を進める、としている。
■みどりの風
みどりの風は、発表した「約束」の中に、国際協力にかかわる記述はほとんどない。唯一あるのは、「『人間の安全保障』を基礎とする外交を展開する」という部分のみ。