カメルーン人のLGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー=性的少数者)人権活動家エリック・オヘナ・レムベンベさんの遺体が7月15日、同国の首都ヤウンデにある自宅で見つかった。16日付ハフィントンポストなどが報じたもので、レムベンベさんの友人のひとりは「同性愛者だから殺された。彼には誰かとの争いも、金銭トラブルもなかった」と証言する。
発見したのは、レムベンベさんの友人ら。電話で連絡が取れなくなってから2日後、レムベンベさんの自宅を訪ねたところ、遺体が横たわっていたという。首と脚は折られ、手と足はアイロンで焼かれていた。正面玄関の外側には南京錠がかかっていた。
レムベンベさんは、ヤウンデに拠点を置く人権団体CAMFAIDS(エイズのためのカメルーン基金)の事務局長を務め、カメルーンのゲイコミュニティのメンバーに対する暴力や恐喝、不当逮捕があることを立証していた。また国連人権理事会の定期審査にも参加していた。
レムベンベさんはまた、同性愛を違法とする76カ国の現状を伝え、法律の廃止を目指すブログ「Erasing 76 Crimes」の貢献者でもあった。LGBTの権利について書かれた本「権利侵害からゲイの権利へ(From Wrongs to Gay Rights)」の著者のひとりでもある。
「レムベンベさんは、平等な社会のために道を切り開いたひとりだった」とヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)でLGBT問題を担当するニーラ・ゴーシャル調査員は彼の死を悼む。
この事件を受けて米国国務省は16日、レムベンベさんを殺害した加害者を非難し、カメルーン当局に対して徹底的で迅速な調査と殺人の訴追を求める声明を発表した。声明文の中には「米国はLGBTを含めすべての権利を尊重する。誰であろうと、彼らが誰を愛そうと、すべての人の人権のために立ち上がる人々を支援し続ける」との一節もある。
オバマ米大統領は2013年6月にアフリカを訪問したが、その際も、アフリカで根強いLGBTに対する差別を問題視していた。米国と欧州連合(EU)はかねて、同性愛行為を違法とする法律を廃止しない国に援助はしないと訴えている。
アフリカの多くの国ではいまだ、同性愛は違法だ。4カ国では死刑。38カ国でも、同意に基づく成人の同性愛者同士のセックスさえ処罰の対象となる。カメルーンでは、6カ月~5年までの懲役と2万~20万CFAフラン(約3000~約3万円)の罰金が科される。(有松沙綾香)