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「ちょっと待って。それは緑のごみ箱に捨てるものでしょ」「でも、ビニール袋これだけしかないのよ」「いや、そういうことじゃなくてね」。こんな会話を1日に何回繰り返しているのか、私は怖くて数えられない。
ここはフィジー・ビチレヴ島西部に位置する、人口1万人ほどのシンガトカ町。この町の中心部にあるローカルマーケットが、青年海外協力隊員(環境教育)である私の活動の中心地だ。首都スバでの現地訓練が終了し、私は8月初めから、シンガトカ町役場の保健建築課の一員として働き始めた。
■ごみ箱だけは分けてあるけれど‥‥
私の現在のミッションは、町役場が管轄するローカルマーケットで衛生管理・ごみの分別を指導すること。秤がないので正確なところは不明だが、町役場の推定によると1日約1トン近く(休日は約1.3トン)のごみがマーケットとその周辺から出る。町役場が1日に3~4回収集車を出さなければならないほどだ。
私の前任の隊員も同じように、ごみの分別と回収に取り組んでいた。そのおかげでマーケットに限っては野菜・果物など有機ごみを捨てる「緑のごみ箱」と、その他のごみすべてを入れる「黄色のごみ箱」が全部で6カ所ほど設置されている。
フィジーでは有機ごみもそれ以外のごみもまとめて回収、まとめて処分するのが普通だ。だからマーケットで有機ごみのみを分別・回収するのは、この国としては先駆的な取り組み。国際協力機構(JICA)と日本のNGOオイスカの支援を受け、生ごみは近くの農場に運んでコンポスト(たい肥)にしている。
とはいっても、冒頭の会話のように、有機物とそれ以外のごみの分別さえ徹底されているとは言い難い。マーケットのベンダー(売り手)の7~8割はフィジアン(フィジー人)のおばちゃん。彼女らは細かいことや神経を使うことが大の苦手だから、ごみを混ぜて捨ててしまうのかもしれない。
■「わかった」って言ったのに
私がごみの分別の仕方を実際に見せて説明すると、彼女らは「イーヨ(わかったよ)」と気持ち良い返事をしてくれる。ただでさえ愛想のよいフィジアンのこと、外国人にはさらに優しくなる。
しかしごみ箱の中を翌日のぞいてみると、やっぱり生ごみでないものが入っている。ふたが閉まりきらないほど満杯の緑のごみ箱に、お菓子の袋やペットボトルなどがたくさん混じっているのだ。
「おばちゃんたちは『わかった』って言っていたのに!」と思いつつ、私は黙々と分別し直す。ただそれではらちが明かないと、マーケットマスター(役場のマーケット責任者)とベンダーのリーダー格のおばちゃんたちに協力を求めることにした。
私が考えた方法はこうだ。まず私が何人かのおばちゃんリーダーたちにごみ分別の仕方を見せる。リーダーたちは、他のベンダーへそれを教える。間違った捨て方をしているのを見かけたら、マーケットマスターへ知らせるのもおばちゃんリーダーの役目だ。
これでマーケットマスターから私が報告を受けるという流れが一応できあがった。「よそ者」である私が直接ベンダーに教えるより、顔見知りの仲間から忠告を受けたほうが動いてくれるのでないかと考えてのことだ。
この方法の効果はまだわからない。始めて日が浅いため、今のところ私は毎日叫んでいる。だが、これからおばちゃん同士の呼びかけで、ごみ分別が定着してくれるのを待ちたいと思う。日常的にごみの分別をする日本からやってきた私が、フィジーのごみの捨て方にすぐに慣れないのと同じように、マーケットのおばちゃんたちがごみの分け方をマスターするのには少し時間がかかりそうだ。