エジプト国民はアメリカの援助を本当に望んでいるのか?

エジプト国旗を振るムハンマドくん6歳(紅海県ハルガダ)。ムハンマドくんの夢は軍隊へ入ること。彼の目に今のエジプトはどう映っているのか

2013年7月3日にエジプトで始まった一連の騒動(軍によるモルシ大統領の追放)。事態は収まらず、悪化の一方をたどっていると報道されています。そんな中、ワシントンポストの8月4日付インタビュー記事で、エジプトのシシ国防大臣が「ムスリム同胞団(モルシ前大統領の出身母体)と関係を深めていたアメリカ政府にもっと影響力を行使してもらいたい」と述べていました。さて、エジプト国民は本当にアメリカからの援助を望んでいるのでしょうか。

私が初めてエジプトへ渡ったのは、“アラブの春”の前の06年10月でした。エジプト人と打ち解けた仲になると、決まって出る話題のひとつが「アメリカが嫌いだ」ということでした。理由を尋ねたところ、「アメリカはイスラム教徒をいつも悪者にする」「パレスチナとイスラエルの問題は、自分たち(エジプト)とアメリカの問題と一緒だ」と話してくれました。

その背景にはイスラムの教えが大きく影響している、と私は考えています。エジプト人はよく言います。「イスラム教徒はみな家族であり、きょうだいだ」と。エジプト人、特にイスラム教徒にとって、パレスチナ人たちは家族やきょうだいと同様で、弾圧されているのを見るのが辛いというのです。

当時は、独裁者として君臨していたムバラク元大統領の統治下でした。秘密警察が治安を維持しているともいわれており、外国人の住む家は盗聴されているという噂もありました。そんな状況だったこともあってか、「アメリカが嫌いだ」という話題は公にはあまり出ることがありませんでした。

しかし、11年から2度目のエジプト生活を始めたとき、革命後の変化を感じました。公の場でも「なぜ、アメリカに介入されたくないのか」という話題がよくのぼりました。言論の自由を手に入れたエジプト人の喜びを肌で感じました。アメリカの介入を望まない理由は5年前とほとんど変わらず、パレスチナやイスラム教徒への差別が挙がっていました。また、エジプトはイギリスやフランスの植民地を経験しているので、他国に支配されることに敏感になっていることも感じました。

モルシ前大統領が勝利した11年5~6月の大統領選は、アメリカではなく、日本が援助しました。結果、選挙は無事に実施され、モルシ前大統領が選ばれました。そのモルシ前大統領が解任された今、エジプト国民はアメリカの介入を求めているのでしょうか。言論の自由を手に入れたエジプト国民は何と叫ぶのでしょうか。