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難民問題への対処で重要なのは「難民受け入れ国」への支援だ――。8月3日に都内で開かれたセミナー「シリア危機:日本の人道的役割―今私たちにできること―」(共催:国連難民高等弁務官事務所=UNHCR、ジャパン・プラット・フォーム=JPF)で、ヨハン・セルスUNHCR駐日事務所代表は「シリア難民の受け入れ国に大きな財政負担がかかっている。国際社会はこの現実を理解しなくてはならない」と強調した。
2011年1月に始まったシリアの紛争で、シリア難民の数は2013年6月時点で180万人を超えた。UNHCRによると、シリア難民を最も多く受け入れているのはレバノンだ。その数は約66万人。レバノンの人口は約420万人ということからも、難民受け入れの負担がいかに大きいかは容易に想像できる。レバノンに続くのはヨルダン(約51万人)とトルコ(約43万人)で、この3カ国でシリア難民の9割近くを占める。
「難民に対する人道支援はもちろん欠かせないが、受け入れ国への支援も非常に重要だ」(セルス代表)。ところが各国から集まった支援額はこれまでで51億ドル(約5000億円)にとどまっており、十分ではないという。「とりわけカギとなるのは、ヨルダンやレバノンといった脆弱国へのサポートだ。受け入れ国が、安定した環境を難民に提供できるように国際社会は努めなくてはならない」とセルス代表は指摘した。
UNHCRは、シリア難民の数はますます増え、13年末までに200万人に達すると予測している。アントニオ・グテーレス国連難民高等弁務官は「シリアの紛争は世界の安定を脅かす危機。ここ数年で直面したことのない最悪の人道危機だ」と国際社会に警鐘を鳴らす。
■ザータリでJENは30万着を配布
シリア危機の深刻さを懸念して、日本のNGOも12年の秋ごろから、ヨルダンやイラクなどの受け入れ国で支援活動を始めた。
ヨルダンのザータリ難民キャンプで活動するのはジェン(JEN)だ。この難民キャンプでは、10万人のシリア難民が生活している。収容する難民の数は増え続け、ザータリ難民キャンプは日に日に巨大化している。
JENが主に手がけるのは、物資の配給や水衛生の改善だ。物資では、日本のアパレルメーカーを通して集まった30万着の衣類を難民に配付。また水衛生では、1200人の水衛生委員会のメンバーとともに、キャンプ内にある400カ所の公共トイレを毎日見回り、衛生状態を保つよう指導している。加えて、飲料水を安定的に供給できるよう水道網も整備した。こうした結果、水に起因する疾患の発症率は5%下がったという。
同団体のヨルダン駐在スタッフである佐々木弘志さんは「キャンプ内でNGO同士の連携もとれてきている。困難な状況にあっても他人を思いやる知恵が難民の間に生まれていることを実感する」と手応えを話す。
■SCJは若者に仕事を提供
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン(SCJ)はレバノンで支援活動する。レバノンには難民キャンプが設置されていないため、難民たちは家賃を払って、ガレージや廃屋、工事中の家に住んでいる。冬場はマイナス10度にまで下がる寒さをしのぐのは厳しい。なかには、家賃を払えずにテントで暮らしたり、段ボールで家を建てたりする人もいる。収入も、日雇いの仕事が週に1度あれば良い方だという。
SCJは、難民の家を一軒ずつ訪問し、必要なモノやコトは何かを調査し、冬物の衣類を配布したり、家の修理を手伝ったりしている。また青少年教育の観点からも、難民となった若者に道路整備などの作業を提供し、少額の労賃を与えている。
レバノンに駐在する同団体の宮脇麻奈さんは「若者たちは学校にも通えず、また仕事もないから、1日中することがない。ある18歳の少女は私に『ただ時間を過ごすより、自分の力を生かして何かしたい』と訴えてきた」と話す。
レバノンには難民キャンプがない分、ホストコミュニティーへの負担が大きい。「難民生活が長くなるにつれて、教育や就労などの生活スタイルは変化していく。それに応じた支援をしていかなければならない」と宮脇さんは今後の課題を語った。(澤田芽衣)