シリアの首都ダマスカス近郊で8月21日に化学兵器が使われたとされ、米軍が軍事介入する懸念が高まるなか、ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)とヒューマンライツ・ナウ(HRN)の2つの人権NGOはこのほど、軍事介入は慎重にすべきとの声明を発表した。
HRWは「いかなる軍事介入も、シリアのすべての民間人をさらなる残虐行為からどれぐらい守れるのか、という観点から判断されるべき」と指摘。HRWは支持・反対いずれの立場もとらないが、軍事介入するとしても「戦闘の全当事者は戦時国際法を厳守する必要がある」とクギを刺した。
戦時国際法は、一般市民に対する意図的な攻撃や、一般市民と戦闘員を区別しない攻撃、過剰な危害を一般市民にもたらす攻撃などを禁じている。「クラスター弾や対人地雷も使われるべきではない。戦闘の当事者は、あらゆる予防措置を講じて、一般市民を攻撃目標から外さなければならない。人口密集地への部隊展開も避ける必要がある」と強調する。
軍事介入に明確に反対するのはHRNだ。「国連安全保障理事会を完全に無視し、その承認を得ず、独断で軍事行動に出るとすれば、深刻な憂慮を表明せざるを得ない」と訴える。
国連憲章は、安保理決議の承認を得ない武力行使を原則として違法としている。これに加えて、国連調査団の調査結果を待たずに、アサド政権が化学兵器を使用したと断定し、軍事行動に踏み切ってもいいのかという懸念もある。
「(シリア紛争の)事態の深刻さを考慮しても、国際社会のコンセンサスなしに、国際法違反の武力行使に出ることは容認できない。紛争を終結させるために、どちらかの勢力に加担する軍事介入ではなく、いずれの勢力にも武器供与・軍事援助をしないルールの確立を求める」とHRN。国際的なコンセンサスでの解決を目指し、安保理は緊急会合を開催すべきだと付け加えた。
紛争が泥沼化するシリア問題を巡っては、ロシアと中国が再三にわたって拒否権を行使。安保理は機能不能に陥り、残虐行為に歯止めをかけることができなかった。HRWとHRNは、シリアで起きている殺害・拷問・略奪などの犯罪を国際刑事裁判所(ICC)に付託し、犯罪者に対する制裁措置を発動すべきとの考えで一致している。