「2014年ミス・アメリカ」のコンテストで、ミシガン大学の医学生でインド系アメリカ人のニーナ・ダブルリさん(24歳)が優勝したことを受け、インターネットやツイッターで誹謗中傷の書き込みが飛び交っている。
その一部を紹介すると、「なぜ外国人(ニーナさんはアメリカ人)がミス・アメリカに選ばれるんだ? 彼女はアラブ人(正しくはインド系アメリカ人)じゃないか!」「彼女がミス・アメリカだというなら、まずはアメリカ人(ニーナさんはすでにアメリカ人)になってもらわないと」「アルカイダのメンバー(事実無根)がミス・アメリカに選ばれたよ」などだ。
一連の書き込みの中でとりわけ目立ったのは、肌の色を差別するかのような記述だ。「ニーナはきっと、南アジアのコンテストでは『肌の色が黒すぎる』から、優勝はできないはず」「ニーナと同じくらい肌の色が黒い女性が、ミス・インディアにはなれないだろうね」
2013年のミス・インディアに選出された3人の女性は実際、ニーナさんより肌の色は白かった。ごく少数の例を除けば、ミス・インディアに輝くのは決まって色白の女性たちだ。ミス・インディアとミス・ワールドに選ばれたことがあるインドの有名女優アイシュワリヤー・ラーイさんは、白い肌と緑の瞳の持ち主。
インドでは、カースト制度がいまだに根強く残っている(憲法上は禁止)。上位カーストは、太陽の下で肌をさらす職業へ従事することが禁止されていたこともあって、肌は概して白いとされている。対照的に、下位カーストの人たちは、清掃・洗濯や皮革製造など、外での労働が多く、肌が黒い傾向がある。
肌の白さはいわば、社会的地位の象徴だ。また、インドで多発する強姦・殺人事件の被害者の多くは下位カーストやダリット(不可触民)の女性といわれる。一方で加害者は、被害者の女性よりも上位のカーストであるケースがほとんど。“白い肌の人”が“黒い肌の人”を激しく差別する現実がある。
インドではここ数年、美白化粧品の市場が急成長している。その対象は女性だけにとどまらない。日本貿易振興機構(JETRO)の調査によると、インドの美白クリーム市場で10%を占めるのは男性用美白クリーム。年30%のペースで売り上げは伸びている。男性用スキンケア製品全体の市場規模はいまや6530万ドル(約65億円)に達するという。この背景には何があるのか。
自由の国アメリカで“美の頂点”を極めたニーナさん。メディアの騒ぎようやツイッターでの誹謗中傷を見るにつけ、インドのみならず、アメリカでも肌の色を差別に結びつけて考える人たちの多さとその根深さを改めて思い知った。(阿部幸那)