JANICと「動く→動かす」が共同声明、「人権」をポストMDGsの理念に

米ニューヨークで国連が9月25日に主催したミレニアム開発目標(MDGs)特別イベントで安倍晋三首相が演説したことを受け、国際協力NGOの国内2大ネットワークである「国際協力NGOセンター」(JANIC)と「動く→動かす」の両団体は、2015年開発目標(ポストMDGs)の“目指すところ”について共同声明を発表した。ポストMDGsとは、2015年に期限が切れるMDGsの後継となる世界共通の開発目標で、策定作業が現在進んでいる。

両団体は、安倍首相の演説内容を「日本の首脳として、MDGsの達成やポストMDGsに対する日本政府の積極的な意思を表した」と高く評価している。ポストMDGsの方向性について安倍首相は「それぞれの国の国内格差の問題に対応するとともに、持続可能な開発が不可欠だ」と指摘。また、日本の政府開発援助(ODA)政策の基本理念である「人間の安全保障」をポストMDGsの理念にすべき、と訴えかけた。

首相はさらに、日本が力を入れる課題として、「保健」(とくにユニバーサル・ヘルス・カバレッジ=すべての人が基礎的保健医療サービスを受けられること)と「災害対策」の2つを挙げ、これまでの取り組みを紹介した。このほか、企業や新興国の役割を強化する必要があると述べた。

JANICと動く→動かすは、安倍首相の発言に加えて、下の3点を提起。ポストMDGsの理念に含むよう日本政府に要望している。

1)日本政府は、「人間の安全保障」だけでなく「人権」をあわせ、それをポストMDGsに向けた日本の理念として打ち出すべき

環境破壊や人権侵害、貧困などから人間を守ることを目指す「人間の安全保障」に、多くの首脳がこのイベントで強調した「人権」を組み合わせれば、理念はより強くなる。国際的な理解や支持を高めることも可能だ。

2)開発を前進させたいとする途上国の声に、日本政府は応えるべき

開発の成果を後退させかねない「気候変動」やグローバルな経済危機に対して、日本政府は国際社会と協力して取り組む必要がある。また、途上国開発への国際的な政策の一貫性を追求し、「後戻りは許さない」という強い意思を示すことが重要。途上国政府にとっても大きな励みになる。

3)日本政府が重視する「災害」対策に、自然災害だけでなく、「人災」も含むことを明確にすべき

経済発展や気候変動などを背景に、「人災」は今後、途上国でこれまで以上に増えると見込まれる。工場や鉱山などから化学物質が流出したり、原子力発電所の事故による放射能汚染などがその例だ。福島第1原子力発電所の事故を含め、災害の経験や教訓を記録・グローバルで共有すれば、人災を未然に防げる。補償などの対応を国際基準化することで、被害を最小限に食い止めることも可能。

国際協力NGOはこれまで、途上国で貧しい人たちのために活動してきた。そのプロセスで培ってきた「市民社会の付加価値」を総動員し、MDGsの達成とポストMDGsの確立に努力していきたい考え。「安倍首相や日本政府には、市民社会の声に耳を傾け、市民社会との協働を深めてほしい」と要望している。