「女性の力で世界に平和を」、国連総会で安倍首相が一般討論演説

安倍晋三首相は9月26日、米ニューヨークの第68回国連総会で一般討論演説をした。シリア情勢、日本経済、北朝鮮やイラクの核問題、アフリカの成長、女性の活用など、内容は多岐にわたった。とりわけ女性の活用については「ウィメノミクス」という言葉を使い、力を込めた。以下、骨子のみ(全文は約5600字ある)。

■シリア情勢

シリアの化学兵器の廃棄に向けた国際社会の努力に、日本は、徹底的な支持とできる限りの協力を表明する。また国内避難民・難民に、国際社会と連携し、手を差し伸べる。

日本のNGOやボランティア組織が、彼らのために昼夜兼行で働いていることを、私は誇りとする。国際社会の助けが及びにくい、反体制勢力の支配地域に対しても支援を続ける。医療センターで働くスタッフの訓練を施し、持ち運びできるX線装置など、医療器具を届ける。

厳しい冬を控え、シリアと周辺国への人道支援として、日本政府は新たに6000万ドル相当(約60億円)を追加し、直ちに実施する。

■女性の活用

日本の成長は、世界にとって利得。日本を成長させるのが、女性の力の活用だ。

ウィメノミクスという主張がある。女性の社会進出を促せば促すだけ、成長率は高くなるという知見で、女性にとって働きやすい環境をこしらえ、女性の労働機会・活動の場を充実させることは焦眉の課題となっている。

女性が輝く社会をつくるために、私は、国内の仕組みを変えようと、取り組んでいる。これは、国内の課題にとどまらず、日本外交を導く糸にもなる。

私はまず、国際社会を主導する一員となるための貢献を4つ述べる。

第一に、日本はUNウィメンの活動を尊重し、誇りある存在になることを目指し、関係国際機関と連携していく。

第二に、日本も、女性・平和・安全保障に関する「行動計画」を、草の根で働く人々との協力により策定する。

第三に、日本は、UNウィメンはもとより、国際刑事裁判所、また「紛争下の性的暴力に関する国連事務総長特別代表」であるバングーラさんのオフィスとの密な協力を図る。

憤激すべきは、武力紛争のもと、女性に対する性的暴力がやまない現実だ。犯罪を予防し、不幸にも被害を受けた人たちを、物心両面で支えるため、日本は、努力を惜しまない。

第四に、日本は、自然災害でともすれば弱者となる女性に配慮する決議を、次回の「国連婦人の地位委員会」に再度提出する。

■3人の女性たち

ここから私は、日本人、バングラデシュ人、アフガニスタン人の3人の女性を紹介する。

佐藤都喜子さんは、母子保健の改善を15年以上、ヨルダンの片田舎で担ったJICAの専門家だった。村人が当初投げた不審の眼差しにひるむことなく、どこででも、誰とでも話をした。芸能の力を借りて説得するなど、工夫に余念のなかった佐藤さんを、村落コミュニティはやがて受け入れていく。

「子どもの数を決めるのは、夫であって、妻ではない」。そんな伝来の発想は、佐藤さんの粘りによって、女性の健康を重んじるものへ、徐々に変わっていった。

ニルファ・ヤスミンさんは、バングラデシュの若い女性で、2児の母。「ポリグル・レディー」の肩書きがある。

納豆から生まれたメイド・イン・ジャパンの水質浄化剤に、「ポリグル」という商品がある。汚れた水に、入れるだけ。余分な物質を吸着して沈殿し、水を透明にするのがポリグルだ。

最初に正しい使い方を教える必要がある。そこで販売員兼インストラクターになるのが、ニルファさんたち「ポリグル・レディー」だ。BOPビジネスとして、女性の力に期待する特徴をもつ。ニルファさんは、夫の収入と合わせ、子どもを上の学校へやることができるようになった。

最後にもう一人。けれどもこのアフガニスタン女性は、もうこの地上にはいない。イスラム・ビビさんは今年の7月4日、凶弾に倒れた。享年37歳。3人の子どもが残った。

アフガニスタン警察の女性警官。9年勤めて重責をになったビビさんは、選挙監視のため、投票所を警護した。また、自分に続く若い女性警官の教育に尽くした。

アフガニスタンの女性警官の数は1800人に達するが、到底足りない。第二、第三のビビさんを生まないため、支援を続けねばならない。

「ウィメノミクス」のひそみにならうなら、女性の力を育てることに焦点を合わせる私たちの開発思想は、世界に平和と、厚生をより多くもたらすだろう。