私は7月に、青年海外協力隊員(環境教育)としてドミニカ共和国北部のロスイダルゴス(人口1万4000人)に赴任した。私にとってドミニカ共和国のイメージといえば、英国の環境NGO「Friends of the Earth」(FoE)が2009年に発表した「地球幸福度指数ランキング」でコスタリカに次ぐ2番目に入った国。幸せの秘訣をずっと知りたかった私はさっそく、簡単なアンケートを実施してみた。サンプルは20人。質問は「あなたの人生で一番大事なものは何?」。
20人のうち12人は「家族が一番大切」と答えた。次いで5人が「健康」、3人が「神」という結果になった。
ドミニカ人の生活をみていると、家族思いというのは本当に実感する。日本から来たばっかりの私に、スマートフォンで撮った家族の写真を見せ、楽しそうにひとりひとりを紹介してくれる。写真大好き、おしゃべり大好き。家に帰れば会えるというのに、外にいても家族にいつも電話する。ドミニカ人は1日中、誰かしらと携帯電話や道端でおしゃべりしている。
仕事が終われば家に直帰。庭の木陰で涼んだり、家族みんなでソファに腰掛けてテレビを見たり、近所を訪ねたりして過ごすのがドミニカ流。人とのつながりをとても大切にしている。幸せは、家族をはじめ、周りの人間が運んでくれる、というのがよくわかる。
私はまた、「ドミニカ共和国はなぜ幸せの国といわれているのか」と尋ねてみた。すると、金物屋の女性は「複雑なことをたくさん考えないからよ。問題はどんなときもやってくる。それでも幸せでなくちゃね。問題ばかりを考えていたら、病気になっちゃうでしょ」。陽気なバイクタクシーの運転手は「困っている人を放っておけない温かい国民性だからだよ」と話す。
私はまだこの国に3カ月しかいないから深部まではわからない。けれどもドミニカ人は明るく、互いに助け合いながら生きている気がする。問題があっても、大声でおしゃべりし、笑い、踊って吹き飛ばす。まさにラテン気質だ。
ドミニカ共和国に来る前、私は「途上国の問題」ばかりに目を向けていた。でも住んでみて、そのイメージはすぐに消えた。むしろ、人情に厚く、楽天的なドミニカ人に、日本人も見習うところがあるのでは、と思う日々を送っている。私は早くもドミニカニサーダ(ドミニカ人化)されたのか、遠い日本にいる家族や親せき、友人に、インターネットを使ってひんぱんに電話することを心がけるようになった。
種中 恵(たねなか・めぐみ)
ドミニカ共和国で活動する青年海外協力隊員(職種:環境教育)。配属先はプエルトプラタ県ロスイダルゴス市役所。1986年生まれ。大阪府出身。京都外国語大学でポルトガル語を専攻。大阪府の高校で英語教師として2年勤めた後、退職し、協力隊に参加。派遣期間は2013年7月~15年7月。