ヒューマンライツ・ナウは11月7日、無人機を使ったテロへの攻撃で多くの民間人が犠牲となっている現状を憂慮し、「無人機攻撃のルールが国際社会で合意されない限り、無人機攻撃は“無法状態”に陥りかねない」との声明を発表した。
国連人権理事会のカウンター・テロリズムと人権に関する特別報告者ベン・エマーソン氏はこのほど、2013年1月10日~8月8日に調査したテロとの戦いに対する無人機攻撃の使用について中間報告書を提出した。これによると、米軍は2004年以降、パキスタンで330回の無人機攻撃を実行。2200人の犠牲者を出していることがわかった。このうち400人は民間人、これ以外の200人も非戦闘員だった可能性が高いという。
アフガニスタンでも、米軍は2012年11月までに447回、英軍は2013年7月までに405回の無人機攻撃を実行した。また米軍はイエメンで2011年末までに29回、イラクでも2008~11年に48回、さらに北大西洋条約機構(NATO)軍はリビアで145回の無人機攻撃を行ったことが確認されている。
無人機攻撃は乱用されやすく、民間人を殺しかねない。こうしたリスクを避けるため、米国は2013年5月、「米国および戦争行為地域外における対テロ作戦での軍事力使用に関する基準と手順」を発表。このなかで、致死的武器(Lethal Force)を使う際は、他国の主権と国際法を順守し、次の基準を満たすことが必要だと定めた。骨子は下のとおり。
1)攻撃対象となるテロリストの存在がほぼ確実なこと
2)非戦闘員が死傷しないことがほぼ確実なこと
3)テロリストが捕獲できないと判断されること
4)攻撃の対象となる国の政府が、米国民への脅威を是正することができない、または効果的に行えないこと
5)米国民への脅威を効果的に是正する妥当な代替方法がないと判断されること
この基準についてヒューマンライツ・ナウは、国際人道法よりハードルが低いだけでなく、実際に、多くの民間人の犠牲者が出ているという事実があると指摘。米英両政府と国連総会に下のことを要請した。
<米英政府に対して>
1)無人機攻撃による民間人の犠牲について包括的で透明性の高い調査を実施し、国際人権・人道法違反の有無を調べ、その結果を公表すること
2)国際人道法(ジュネーブ条約)に違反するケースは、指揮官も含め、刑事責任を追及し、アカウンタビリティ(説明責任)を果たすこと
3)殺された民間人の遺族へ適切な補償をすること
4)対象国の同意なき無人機攻撃を即時全面停止すること(パキスタン政府は停止を求めている)
<国連総会に対して>
1)無人機攻撃が国際人権・人道法に違反することがないような国際ルールを確立すること、使用国による透明性のある調査、犠牲者への補償を求める国連総会決議を採択すること
2)国連人権理事会と協調し、無人機攻撃を規制する国際ルールを早急に確立すること