世界銀行と国際金融公社(IFC)は報告書『ビジネス環境の現状2014:中小企業の規制(仮題)』(Doing Business 2014: Understanding Regulations for Small and Medium-Size Enterprises)を10月29日に発表した。その中で、2012年に世界114カ国で規制改革が238件(前年比18%増)行われ、起業や事業拡大の基盤が整備されつつあると指摘している。
世界銀行のプレスリリースによれば、「費用がかかる複雑な手続きを課する国や、制度が確立していない国が徐々に、実績を上げている国の規制を採用し始めている」と世界銀行グループのアウグスト・ロぺス=クラロス・グローバル指標・分析担当局長は述べており、今後は規制の格差が各国間で縮小していくことが予想される。
ビジネス上の手続きには、起業、資本調達、破産など、複雑で様々なプロセスがある。例えば、世界平均で起業時には7つの手続きが必要となり、25日もの期間、そして1人あたり国民所得の32%もの費用がかかる。この煩雑なビジネス規制が、特に途上国での起業、経済成長、それに伴う雇用創出を妨げている。途上国の経済の大部分を担う中小企業は、複雑な規制に対応する余力がない場合が多い。
ジム・ヨン・キム世銀グループ総裁は「ビジネス環境を改善することは、世界と各国の経済成長の鍵」となり、さらに雇用創出を通じて「2030年までに極度の貧困をなくすという我々の目標を達成するためのステップ」になると述べている(世界銀行プレスリリースより)。
地域別に見ると、特にサブサハラ・アフリカ諸国の多くでビジネスの規制改革が進められている。2009年以降、規制改革が最も進んだ20カ国のうち、9カ国がサブサハラ・アフリカの国々(ベナン、ブルンジ、コートジボワール、ガーナ、ギニアビサウ、リベリア、ルワンダ、シエラレオネ、トーゴ)だ。
一方、中東・北アフリカ諸国は、政治的・社会的不安から規制改革が滞っている。シリアは2012~13年に規制環境が最も悪化した国となった。
『ビジネス環境の現状』は世界銀行とIFCの主要報告書であり、事業設立、経営、貿易、納税、破産手続きという、各国の企業のライフサイクルを通じて適用される規制を分析する。ビジネス環境の総合ランキングでは10の指標に基づき、189の国と地域をランク付けしている。1位から3位は順に、シンガポール、香港、ニュージーランドとなっている。日本は「電力調達の容易さ」「投資家に対する保護」「破産処理」の指標で高い評価を得たものの、総合順位は27位にとどまった。(鈴木瑞洋)