国連児童基金(UNICEF)は12月11日、「すべての子どもが生まれながらに持つ権利:出生登録における不平等と傾向」と題する報告書を発表し、出生登録されていない5歳未満児は世界で約2億3000万人に上ることを明らかにした。これは、5歳未満児の3人にひとりは「公に」存在しないことを意味する。
2012年を例にとると、誕生してすぐに出生登録された新生児は世界全体でおよそ60%しかいない。とりわけ低いのは南アジアとサブサハラ(サハラ砂漠以南)アフリカ諸国だ。出生登録率が最低なのはソマリアで、わずか3%。このほか、リベリア4%、エチオピア7%、ザンビア14%、チャド16%、タンザニア16%、イエメン17%、ギニアビサウ24%、パキスタン27%、コンゴ民主共和国28%がワースト10に名を連ねる。
仮に出生登録されたとしても、こうした国の子どもたちの多くは「出生登録証」をもっていないのが現状だ。東部・南部アフリカで出生登録証をもっているのは、出生登録された子どもの約半数にとどまる。世界全体に目を移しても、出生登録された子どもの7人にひとりは登録証をもっていない。発行に費用がかかる国もあり、それが大きな要因となっている。
未登録の子どもたちは、教育や保健ケア、社会保障から除外されがちだ。また自然災害や紛争、人身売買などで家族とはぐれてしまった場合、身元を確認することが難しく、家族を探しにくいという問題もある。
多くの子どもが出生登録されない事態についてUNICEFは「社会の不平等と格差の兆候」ととらえている。不平等の影響を最も受けるのは、特定の民族・宗教に属する子どもや、農村や遠隔地に住む子ども、貧しい家庭や教育を受けていない母親をもつ子どもたちだ。
UNICEFのギータ・ラオ・グプタ事務局次長は「出生登録は“権利以上のもの”。出生登録は、国家の発展から子どもたちが忘れさられず、その権利を否定されず、隠されないことを保証するうえでも重要だ」と話している。
UNICEFはかねて、アフリカなどで携帯電話を使った出生登録システムの普及を推進してきた。そのひとつが、UNICEFと民間企業が支援するウガンダの「Mobile VRS」だ。Mobile VRSでは、携帯電話を使うことで、これまでは数カ月かかっていた出生登録の手続きをわずか数分で済ませることが可能になった。このため生まれた病院で新生児を出生登録できる。
コソボでは「Rapid SMS」と呼ばれる携帯電話を活用した技術をUNICEFは導入。これによって出生登録されていない子どもを見つけ、報告する作業が、効率的で低コストで実施できるようになった。
12月11日はUNICEFの67回目の創立記念日だった。この報告書は、161カ国の統計の分析と国別の出生登録について最新データと推定値をまとめたもの。