国際協力機構(JICA)主催の公開セミナー「パキスタン・アフガニスタンの女性に教育機会を~教育を通じた女性のエンパワーメント~」が12月8日、都内で開催された。京都女子大学の内海成治教授、JICAの「アフガニスタン国識字強化プロジェクトフェーズ2」の小荒井理恵専門家、JICAの「パキスタン国ノンフォーマル教育推進プロジェクト」の大橋知穂プロジェクトアドバイザー・専門家が登壇。パキスタンとアフガニスタンの女性が教育を受けられない理由は地域や経済状況によって異なる、と強調した。
女子の教育は「小学4年まで」
パキスタンやアフガニスタンなどの南アジア諸国にはいまも、教育を受けられない女性が多く存在する。女性の教育の必要性を訴えていたパキスタンの少女、マララ・ユスフザイさんが2012年10月、タリバンに襲撃されたことは記憶に新しい。この事件は、パキスタンなどの女性が教育機会を得ることは「命がけ」という現実を知らしめ、国際社会の注目を集める結果となった。
アフガニスタンの事情について内海教授は、女子が通う学校の環境は地域によって異なる、と指摘する。「カブール市内の女子校は男子校より環境は悪いが、まだ良いほうといえる。だが地方に行くと、テントが校舎だったり、もっと条件が悪いところではテントの質も悪く、児童・生徒は狭いテントの中に詰め込まれている。そうした中で授業を受けている」
女子が教育を受けられるかどうかは、民族性も関係している。内海教授が調査したアフガニスタン中部のバーミヤン州ドゥカニ地域では「ハザラ」と「サイード」という2つの民族が暮らす。サイードはいわゆる上流階級だが、ハザラはそうでない人たち。この2つの民族は別々のコミュニティを形成している。ハザラの集落では女子が教育を受けるのは小学4年生までというのが一般的とされる。
2006年の調査では本当に、ドゥカニの学校にハザラの5年生以上の女子児童はひとりもいなかった。また、1時間以上をかけて通学する男子児童が10人いたのに対し、女子児童はゼロ。
内海教授は「民族と性別が、大きな教育格差を生んでいる。(この問題を解決していくには)適切な場所に学校を建てたり、女性の教員を養成したりするなど、女子の生活に適応する学校や制度を作れるよう支援することが必要だ」と指摘した。