パキスタンとアフガニスタンの女性はなぜ教育を受けられないのか? 

京都女子大学の内海成治教授

アフガン女性の識字率は12

教育を受ける機会に恵まれないことから、アフガニスタン女性の読み書きの能力は驚くほど低い。アフガニスタンの15歳以上の識字率は26.2%と全世界で最低の水準だが、男女別でみると、男性の39.3%に対し、女性はわずか12.5%だ。

JICAの小荒井専門家は「家の外で活躍する女性もいるにはいるが、家の外に出ることすら許されない女性もいる。行動範囲に厳しい制限があることも、女性が学校に通うことのできない理由のひとつになっている」と説明する。

女性の行動範囲に制限があるのはアフガニスタンの風習のためだ。アフガニスタン社会では「10歳程度の女子を“成熟した女性”」とみなす。成熟した女性を守るため、女性を家の外に出すことや男女共学を嫌がる家庭があるのが現状。また武装勢力が、女子が学校へ行くことを妨害しようと、学校や教師、児童・生徒を攻撃する。ターゲットとなるのは女子校だけでなく、共学の学校も含まれる。

パキスタンでもアフガニスタンと同様、女性が教育を受けられない理由は多岐にわたる。「村に女子中学校がなく、小学校だけ行かせても意味がないから、女子を学校に通わせない」と考える親もいるという。これは小学校の教育だけ受けても役に立たないとされるからだ。

パキスタンでも、アフガニスタンと同じように女子を10歳程度から“成熟した女性”とみなすため、男子と同じ中学校へ通わせることに反対する考えがある。また、親がわが子に教育を受けさせたいと思っても、貧しければそれは不可能だ。

パキスタンの教育についてJICAの大橋専門家は「世界で2番目に中退率が高いことが問題。小学校を卒業する前に40~50%が辞めてしまう。その3分の2が女子だ。学校へ行ったことがない子ども、中退した子ども、若者、大人たちにも、教育を受ける機会を改めて提供する必要がある」と話す。

アフガニスタンやパキスタンの女性が教育を受けられない理由はひとつではない。これ以外にもたくさんある。女性の教育の推進は、その女性を取り巻く状況や都合に配慮しなければならない、と登壇者らは口をそろえた。(渡辺美乃里)

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