2007年以降に誘拐されたエリトリア人は3万人、政府も関与か

最大で3万人のエリトリア人を、ギャングが2007年以降、エリトリア、スーダン両国の国境警備隊と共謀して拉致していたことが、欧州議会に提出された報告書でわかった。BBCが12月4日、報じた。

ギャングは、エリトリアを離れようとする難民を主に狙って、エチオピア、スーダン、エリトリアなどで誘拐。事実上の無法地帯になっているエジプト・シナイ半島へ連れて行き、拷問しながら、身代金を親族に要求するのが常套手段だ。支払われた身代金総額は合計で少なくとも6億ドル(約620億円)と見積もられる。身代金を得る以外では、アラブの遊牧民(ベドウィン)に売り払われることもあるという。

拉致されたエリトリア人らは通常、トイレがない状況で、鎖につながれる。脱水症状や飢えに苦しみ、睡眠をとることもままならない。臓器売買のターゲットにされるかもしれないとの恐怖にもさらされる。逃げようとすれば、ひどい拷問を受ける。

報告書の著者のひとりで、スウェーデンで活動するエリトリア人人権活動家のメロン・エスタファノス氏は「私のいとこはスーダンで誘拐され、シナイ半島に連れて行かれた。3万7000ドル(約380万円)の身代金を払って、解放してもらったが、拷問を受け、強かんされた」とBBCに語った。

報告書は、エリトリアの国境警備隊の直接的な関与なしでの誘拐・人身売買は不可能だと指摘している。ただエリトリア政府は、こうした関与を否定。駐英エリトリア大使は、エリトリア政府は目下、犯人の追跡に全力を挙げているところだ、と話している。

国連によると、2012年は1カ月およそ3000人のエリトリア人が、深刻な干ばつなどによる貧しさから逃れるために、国外へ脱出した。その多くは、スーダン東部の難民キャンプを目指した。(渡辺美乃里)