アジア太平洋で拘禁される難民・庇護希望者は1万4000人、UNHCRが警鐘

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、非正規の移住を抑制するためにアジア太平洋諸国の政府が難民や庇護希望者を拘禁するケースが増えている、と警鐘を鳴らした。UNHCRは、国際的な庇護を求める人たちを拘禁することに原則反対している。

アジア太平洋地域で拘禁されている難民・庇護希望者の数は、2011年の7800人から、2012年は1万1500人、現在は1万4000人近くと、この2年でほぼ倍増した。この数字はUNHCRが把握しているもので、実際はもっと多いもようだ。多くは何年にもわたって拘禁されている。

UNCHRによると、拘禁されている人の13%以上が妊婦を含む女性だ。子どもの比率もほぼ同じ。UNHCRのバルガス顧問は「たくさんの子どもたちが格子の向こうで衰弱しているという事実を知れば、多くの人は衝撃を受けるだろう」とコメントしている。

女性や子ども以外では、少数民族もひどい境遇に置かれている。ミャンマーのロヒンギャ族はミャンマー政府から迫害され、国籍すらもたないが、こうした人たちは、恣意的で、また無期限に拘禁されやすい。送還する先はなく、明確な解決策もないのが現実だ。

人権侵害に相当する扱いが止まらない理由のひとつに、南アジアや東南アジアでは難民条約に調印している国が少ないことがある。法的な枠組みが弱く、難民は不法移民としてとらえられがちだ。移民管理の手段として拘禁される、とUNHCRは指摘している。

こうした事態を重くみたUNHCRは2012年9月、拘禁の決定をする政府や関係機関への助言として、難民・庇護希望者の拘禁について定めるガイドラインを発表した。このなかで、難民・庇護希望者に報告を義務付けたうえで、コミュニティーで暮らせるよう釈放したり、移動の自由を保証しながら指定の一時受け入れセンターを居住施設とするなど、拘禁の代替措置を示している。

このガイドラインが奏功し、タイでは2013年初め、人身売買の脅威にさらされると認定された数百人のロヒンギャの女性と子どもが釈放され、タイの社会開発・人間安全保障省が運営する住居に移された。UNHCRは現在、移民拘禁センターに収容されているロヒンギャの男性についても、移動の自由と基本的な社会サービスを受ける権利が保障された場所へ移し、家族が再び一緒に暮らせるようタイ政府に働きかけている。