フィリピン・セブ市中の80のバランガイ(最小行政単位)から毎日、ごみが運ばれてくるごみ捨て場「イナヤワン」。1日に多いときは100台以上のごみ収集トラックがやってくる。8月は6130トンのごみが運搬され、うち1400トンがリサイクルセンター・エヴォ&エマに回された。
セブ市は2011年4月に「分別しないごみは回収しない」という方針を打ち出し、北九州市からの支援も得て廃棄物管理プロジェクトを推進。この結果、ごみの30%削減に成功した。ところが12年には取り組みが後退。そこで13年3月に再び、「15年までに廃棄物の排出量を11年比で50%削減する」という強気の目標を掲げた。
目標をクリアするうえでネックとなったのが廃棄物処理場の不足だ。その打開策としてセブ市は、日本の中小企業の技術を途上国に普及させることを支援する国際 協力機構(JICA)のスキームを活用。萬世リサイクルシステムズ(横浜市金沢区)とアムコン(横浜市港北区)と提携し、中間処理施設と浄化槽汚泥脱水装 置を設置し、リサイクルを進めているところだ。イナヤワンのスカベンジャー(ごみを拾って暮らす人)もスタッフとして雇われる予定。
スカベンジャーからの採用を決めるのは、セブ市でごみ収集運搬・リサイクル業務を管理するエドガルド・パマスさん(53歳)の上司。選考の決め手は「スカベンジャーとしての仕事ぶりだ」と話す。
エドガルドさんは16年前までエアコン会社で働いていた。ごみ問題への関心の高さから転職したという。「20年前に妻と別れた。それからはずっと、僕の恋人はごみ山だよ。寝ても覚めてもごみのことを考えている」。自身も、家庭の生ごみをコンポスト(堆肥)にして使っている。
「ぼくはJICAが大好き。一番良い援助機関だと思う。セブ市の海岸沿いに美しい道路も建設してくれた。10~15年後に、シンガポールみたいにショッピングモールが建ち並ぶことを想像するとわくわくする」
フィリピンの13年の国内総生産(GDP)成長率は7.2%。東南アジア諸国連合(ASEAN)主要5カ国の中ではトップだ。15年には、セブ市湾岸の埋立地にアジア最大級のショッピングモールも誕生する。JICAの有償資金協力ですでに、埋立地(約123億円、東洋建設)と海岸道路(約184億円、東亜建設工業・大成建設・丸紅・鹿島)は完成済みだ。
フィリピンの人口増加率は毎年1.9%とハイペースで、13年には世界で12番目の国として人口1億人を突破した。経済成長と人口増加のダブルパンチで、ごみの量が増えるのは必至のなか、セブ市の目標「ごみ削減率50%」はかなりハードルが高い。しかしそれを乗り越えられたら、エドガルドさんの言うように“わくわくする未来都市”が実現するかもしれない。