地雷やクラスター爆弾を根絶するために活動するNGO「地雷廃絶日本キャンペーン」(JCBL)はかねて、カンボジアのシェムリアップ州でバリアフリーのトイレを作ってきた。地雷被害にあった生存者(サバイバー)が1人で用を足せるようにすることが目的だ。「これによりサバイバーも自尊心が保たれる」とJCBLの石井由紀子さんは語る。
バ リアフリートイレは車いすで入れる広いスペースを備える。体も洗える。壁があり鍵もかかるので女性もレイプなどの危険にさらされず安心して水浴びができ る。石井さんは「利用者は毎日手入れをしてきれいに使ってくれる」と嬉しそうに話す。トイレを設置してから、サバイバーらは生き生きしてきたという。
バリアフリートイレの設置コストは1基5万円。トイレが壊れてもすぐに修理できるよう、現地で調達できる物を材料に使う。
カンボジアの農村では、トイレを持たない人の方が圧倒的に多い。国連児童基金(UNICEF)によると、カンボジアでトイレを利用できるのは国民の17%のみ。足などを失ったサバイバーにとって、藪の中まで用を足しにいくことは困難だ。必然的に家の近くで済ますことになる。しかしそうすると家周辺の衛生が悪化したり、レイプに遭う危険がある。不衛生な環境から病原体が広がり、障がい者にとって「第2の障がい」といわれる感染症にかかることもある。
石井さんは「バリアフリーのトイレがあれば、こうした問題を防止できる。ただ資金や人手が足りない。支援の輪をもっと広げていきたい」と力強く語る。
カンボジアでは1979年に内戦が終結した。だが今も地雷やクラスター爆弾による被害は絶えない。カンボジア地雷被害者情報機関(CMVIS)によれば、地雷の被害者数は1979年~2012年2月に6万4057人。地中には今も大量の不発弾が埋まっている。