「アフガニスタンに笑いを!」、笑福亭鶴笑師らが大阪で帰国報告

来場者に無事の帰国を報告するチームお笑い国際便のメンバー

来場者に無事の帰国を報告するチームお笑い国際便のメンバー

笑いを届けることで、紛争が続くアフガニスタンの人々を元気にしたい――。大阪の落語家、笑福亭鶴笑師らが8月にアフガニスタンの首都カブールで開催した「アフガン寄席」の帰国報告会が10月7日、大阪市北区の天満天神繁昌亭で開かれた。鶴笑師は「笑いは気休めかもしれない。それでも人々の元気のもとになることは確かだ」と現地での活動を振り返った。

このプロジェクトは、「お笑い芸人だからこそできる国際貢献をしたい」と考えた鶴笑師ら有志で発足。鶴笑師は、落語家仲間の桂三金師、マジシャンの阪野登さんにジャーナリストの西谷文和さんを加え、チームを結成した。今回のアフガニスタン公演は、2010年のイラクに続き2回目。メンバーは出発前、日本各地でチャリティー寄席を開催し、活動資金を集めた。

鶴笑師ら一行が訪れた首都カブールは、復興バブルに沸き、建設ラッシュが起きている一方、マンションを建てるために立ち退きを迫られている避難民キャンプもある。公立病院は廊下にまでベッドがあふれ、治療も満足に行き届いていない。

こうした現状に少しでも支援の手を差し伸べようと、鶴笑師らが避難民キャンプや学校、子ども病院でお笑い公演をしたほか、ノートやペン、サンダルといった支援物資を配布するなどの活動を行った。当初の予定にはなかったが、急きょ現地のテレビ番組に生出演して芸を披露したりもした。

報告会で、鶴笑師は、子どもたちにわかりやすく笑いを伝えるため、現地では、紙ではさみを切り形を作る「紙切り」や、人形を使った「パペット落語」を披露し たことを説明。「子ども病院を訪れた時は、ベッドでぐったりしていた子どもたちが、起き上がってメンバーの後ろをついてきた」とエピソードを紹介した。鶴笑師のパペット落語は、厚生労働省社会保障審議会が推薦する児童福祉文化財にも選ばれており、子どもたちの健全な育成に資するものと評価されている。

もうひとりの落語家、桂三金師は、細長い風船をひねって動物の形を作るバルーンアートを披露。「避難民キャンプの子どもたちはパンダやウサギを見たことがなく、風船で作ってもあまり理解されなかった」という。一方で、コミカルな踊りや、体重120キロの自身の大きなお腹をポンポンと叩くしぐさは大受け。鶴笑師は「子どもたちは、芸を見るよりも、一緒に遊んでほしかったのでは」とツッコミを入れた。

鶴笑師らが届けた「笑い」は、言葉や文化、宗教、国籍などあらゆる違いを超えて、苦境に生きるアフガニスタン人の心に響き、時に「涙」を誘った。

アフガニスタン人の現地コーディネーターは「僕は今日、2回泣いた。1回目は、30年ぶりに街で人々が笑うのを見て、思わず涙が出た。2回目は、子どもたちがメンバーの腕を触っているのを見て、うれしくて泣いた」と、鶴笑師らに話したという。アフガニスガンでは、相手の腕を触るのは「心から感謝している」という意味がある。

鶴笑師は「アフガニスタンの子どもたちには、『外国人が笑わせてくれた』という楽しい記憶をいつまでも持っていてほしい」と報告を締めくくり、紛争が続くアフガニスタンに一日も早く平和と「笑い」が再び訪れることを願った。