インドネシアの国家警察が警官志望の女性に対し、約50年にわたって「処女検査」を実施していることについてヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)はこのほど、「女性を侮辱する慣行。検査を即刻廃止すべきだ」との声明を発表した。
HRWによると、インドネシア国家警察の募集サイトには「女性志望者への処女検査は必須。志望する女性は処女でいるべき」と書かれているという。既婚女性は警官への応募資格がない。ジャカルタやバンドンなどで同団体が5~10月に実施した聞き取り調査でも、対象となった女性全員が「警察学校で一緒だったほかの女性候補生もすべて検査を受けさせられた」と証言した。処女検査は警察医療保険センターの職員が担当。女性候補生の処女膜が無傷かどうかを確認するため「二本指検査」をするという。
この処女検査は、候補生のための健康診断ガイドラインを根拠とする。ただガイドラインは「産婦人科」検査を義務づけているだけで、処女検査についての記述はない。にもかかわらず検査は採用プロセスの初期段階で健康診断の一環として1965年から実施され続けているのが実態だ。
2008年に処女検査を受けた女性は「検査室に入るときは本当に動揺した。検査されたら、もう処女でなくなってしまうのではないかと恐ろしくて。とても痛かった。私の友だちは気絶した」と当時の状況を振り返る。この問題に取り組む地元NGOも「処女検査で女性警官はトラウマとストレスを経験している」と懸念する。
インドネシア国家警察は12月までに女性警官の数を50%増の2万1000人にする計画を立てている。警官数は現在約40万人であるため、女性警察官の比率は3%から5%に高まる見通しだ。国家警察は4月、かつてない規模で人員募集をかけ、その結果、7000人の女性候補生が7カ月の訓練プログラムを受講している。
HRWのニーシャ・バリア女性の権利局の局長代理は「処女検査は、性別に起因する暴力の一形態。警官としてのキャリア資格を測る物差しにはならない。この悪質な慣行は能力ある女性を警察から遠ざけている」と批判する。
HRWはこれまで、エジプトやインド、アフガニスタンなどでも、警察による「処女検査」を調査・検証してきた。