スマホ普及で仕事を失うヤンゴンの観光カメラマンたち、収入はかつての半分以下!

夜はライトアップされ、黄金に輝くシュエダゴン・パゴダ(ミャンマー・ヤンゴン)

ミャンマー・ヤンゴンの中心部に建つ寺院、シュエダゴン・パゴダには、観光客の写真を撮る70人の「公式カメラマン」がいる。だがその数は年々、減るばかり。理由は、スマートフォンなどカメラ付きの携帯電話が普及し、自分で写真を撮る人が増えてきたからだ。ミャンマー・タイムズは2015年12月24日、スマホに仕事が奪われる観光カメラマンの悲哀にスポットを当てた記事を掲載した。

シュエダゴン・パゴダの公式カメラマンのひとりは「1日の収入はかつて1万チャット(約1000円)以上あった。祝日はもっと。だがいまは5000チャット(約500円)を稼ぐのがやっとなときもある」と嘆く。

公式カメラマンは個人事業主だ。しかし営業にあたって売り上げの7割をマージンとして契約先に払う必要がある。観光客から受け取る写真代は、横4インチ・縦6インチ(1インチ=2.54センチメートル)のサイズで1枚500チャット(約50円)。うちカメラマンの取り分は150チャット(約15円)だ。1日の収入が5000チャットに届くには1日30枚以上の写真を撮らなければいけない。これは至難の業という。

カメラマンは通常、撮った写真を15分以内で観光客に渡す。これを可能にするのがメッセンジャーボーイの存在だ。12歳前後の子どもたちは、写真を収めたフィルムをパゴダの北口にある現像屋まで走って持っていき、できた写真を走って持ち帰る。1往復当たりの報酬は200チャット(約20円)。あるカメラマンは「メッセンジャーボーイの方がカメラマンより儲かる。仕事を交換したいよ。ただ走るには歳をとりすぎた」とこぼす。

2015年に株式市場がオープンするなど、経済発展の真っただ中にあるミャンマー。ただ、シュエダゴン・パゴダの観光カメラマンとして20年以上過ごしてきた中年男性にとって、他の仕事に就くことはそう簡単ではない。「どんなに状況が悪くなっても、いまの仕事は辞められない。長い年月を経て、観光カメラマンとパゴダの間には“切っても切れないつながり”ができあがっている」と言う。

ミャンマー人、とりわけ地方出身者にとってシュエダゴン・パゴダをバックにした1枚は一生の思い出だ。観光客はいまも絶えないが、観光カメラマンの顧客は、カメラ付き携帯電話を持っていないか、その使い方がわからない人だけになりつつある。