世界の122人に1人が難民・国内避難民・庇護申請者――。紛争を理由に「家を追われた人」の数が2014年末時点で過去最多の5950万人(イタリアの人口に匹敵)に上ることがわかった。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が6月18日に発表した「グローバル・トレンズ・レポート」で明らかにした。5950万人の内訳は、難民1950万人、国内避難民3820万人、庇護申請者180万人。難民の半数以上は子どもだ。
家を追われた人の数は、13年末の時点では5210万人(難民1670万人、国内避難民3330万人、庇護申請者120万人)だった。この1年で740万人増えた計算になる。これは過去最悪の増加傾向。母国から逃れる手段として、近年は地中海やアデン湾、紅海などを船で渡る人が目立つのも特徴だ。
難民を最も多く出しているのは、11年に勃発した紛争が泥沼化するシリア。14年末時点で388万人を数える(これに加えて国内避難民760万人)。アフガニスタン(259万人)、ソマリア(110万人)がこれに続く。中東・南アジアとサブサハラ(サハラ砂漠以南)アフリカが難民の大半を占める。東南アジアでは、イスラム教徒の少数民族ロヒンギャに対する迫害が深刻化するミャンマーが50万人近くの難民を出し、7番目に多い。
難民を最も受け入れているのは、159万人のシリア難民が暮らすトルコだ。以下、パキスタン、レバノン、イラン、エチオピアの順。難民の約10人に9人(約86%)を途上国が受け入れているという現状がある。
レポートによれば、難民と国内避難民の数はすべての地域で増えている。過去5年だけみても紛争が勃発・再燃した国は、シリアやイラク、コンゴ民主共和国、南スーダン、パキスタンなど15カ国。終息に向かう紛争は皆無だ。一方、14年に故郷へ戻った難民は12万6800人。これは過去31年で最少の数字だった。
アントニオ・グテーレス国連難民高等弁務官は「国際社会が紛争を終わらせ、平和へ導く対応力を持っていないことに強い危機感を感じる」と訴える。