ミャンマー議会で7月7日、仏教徒の女性と非仏教徒の男性の結婚を規制する「仏教徒女性特別婚姻法」案が採択されたことを受け、ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は9日、この法案への署名をテインセイン大統領は拒否すべきだ、との声明を発表した。法案は、仏教徒の女性と結婚した異教徒の男性にとって差別的な内容となっている。
法案の概要は下のとおり。
・郡区の登記官が夫婦(仏教徒の女性と非仏教徒の男性)の婚姻届を14日間公開し、結婚に異議がある者が地方裁判所に提訴することを認める
・20歳未満の仏教徒の女性が非仏教徒の男性と結婚する際は、両親または法律上の後見人から許可を得なければならない
・非仏教徒の夫は、仏教徒の配偶者が仏画や仏像を置き、仏教儀礼を行うなど、仏教を自由に信仰することを尊重する
・非仏教徒の夫は「仏教徒の感情を荒立てる意図を持って文章を書き、発言し、振る舞い、または身ぶりをするといった悪意ある行為」を慎む義務がある
・こうした条項への違反は離婚理由になる。離婚となった場合、非仏教徒の夫は、夫婦の共有財産で自分の取り分を主張できない。また、妻に慰謝料を払い、子どもの親権を奪われる
・法律は既存の結婚にも適用される。異なる宗教を信仰する夫婦は宗派間結婚を届け出る義務を負う
・仏教徒の女性と結婚するヒンズー教、シーク教、ジャイナ教の男性は、自分が育った家庭と縁を切らなければならない。死亡した際は、自分の全財産が仏教徒の妻と子どものものとなる。
・こうした条項に従わない場合、刑法295条が定める宗教侮辱罪で起訴される可能性がある。有罪になると2~4年の禁固刑
HRWのフィル・ロバートソン・アジア局長代理は「この法案は、宗派間の結婚を露骨に抑制しようするもの。大統領は廃案にし、宗教的・社会的不安がこれ以上高まるのを避けるべきだ」と訴える。
特別婚姻法は、「民族宗教保護法」と呼ばれるパッケージ化された4法案のひとつ。影響力を増す「民族宗教保護協会(マバタ)」がミャンマーの国会議員に圧力をかけたことが背景にある。マバタは、有力な僧侶が作る全国組織で、ミャンマーの宗教的マイノリティーであるイスラム教徒、とりわけロヒンギャ族をかねてから非難してきた。