ミャンマー・ヤンゴンのダウンタウンの道路の両脇に所狭しと並んだ車の数々。駐車スペースが少ないダウンタウンでは道脇が主な駐車スペースとなっている。ユニークなのは、建物の所有者がその前の道を終車スペースとして貸し出していることだ。その駐車スペースは誰でも利用できるが、所有者に駐車料金を払うか、軒先にある椅子の上や植木鉢の中にお金を入れることが条件だ。これが「ヤンゴン流駐車作法その1」だ。
駐車する人は、建物の所有者の顔見知りであることが多い。お得意様になると、所有者から信頼を得られるので、通常より安い値段で駐めることができる。
もし人もいなく、椅子も置かれていなかったら、支払いはどうするのか。そのまま駐車場から出てもお咎めはない。しかし、ここで「ヤンゴン流作法その2」が光る。ドライバーは自発的にエンジンをふかし、その音で所有者にわざわざ合図を送る。そのまま出てしまえば駐車料金を払わなくて済むのに、払おうとする姿勢はダウンタウンの住人の礼儀を垣間見ることができる。
こうした駐車システムに行き着くまでには紆余曲折があった。「初めは、『このスペースはホテルのものですよ』と書いた立て看板をホテルの前に置いていた。けれど、それを無視して車を駐めるドライバーもいて意味がなかったんだ」。ダウンタウンのホテルの従業員の一人はこう語る。
また、ある時からは、一部の富裕層が路上駐車を取り締まり始めた。ヤンゴン市当局にお金を払い承認を得て1時間約100チャット(10円相当)を回収するようになった。当局は収入を得られ、富裕層は路上駐車をより取り締まるほどより多くの利益を得られる。しかし、このシステムも、富裕層だけが得をする不平等なものであったため、次第に廃れてなくなった。
ヤンゴンの路上では中古車があふれ、交通インフラの整備が追いついていない。そんな中で、路上駐車を巡るヤンゴンのダウンタウンの人々の駐車作法は自然にお金を払うという点で、「世界寄付指数第1位」に輝いた証左と言えるのではないか。