イスラム・仏教共生の秘訣は「家族愛」、多民族国家ミャンマーで見つけた

ミャンマーでは人口の約9割を仏教徒が占める

異なる宗教を信仰する人々が共生していくためには何が必要なのだろうか。そのヒントを、多民族国家ミャンマーで見つけた。

現在ミャンマーで車の販売業をしているイスラム教徒、ガン・ゴーさん(30)の家族は、イスラム教徒と仏教徒が混在している。まるで様々な宗教を信仰する人々が暮らすミャンマー社会の縮図のようだ。

ガンさんは、仏教徒の父と、イスラム教徒の母の元に生まれた。父は母と結婚するためにイスラム教に改宗した。そんな父の選択を、ガンさんは「母への愛」だと感じている。6人いる姉は、5人が仏教徒でイスラム教徒が1人。大学生になったころ、それぞれが自分の信仰を決めた。末っ子のガンさんは、特に母に可愛がられていたため、母にあわせてイスラム教を選んだ。

家族で外食に行く時は、イスラム教徒が食べられる食事に仏教徒の姉があわせてきた。ガンさんは「宗教が違っても、愛情があれば大丈夫」と誇らしげだ。ガンさんにとって宗教とは「人間が人間らしく生きるためのもの」と言う。

しかし、信仰は時に過激な思想に結びつく場合もある。ミャンマーでは近年、過激な僧侶らの集団「969」などによるイスラム教排斥運動が活発だ。969とは仏教の三宝を表す数字で、フェイスブックなどを通じて盛んにデモを宣伝している。

デモではイスラム教徒側に多数の死傷者が出ており、ガンさんも「969の関係者が住んでいる地区は危険で住めない。なるべくイスラム教徒が多い地区に住んでいる。本来の僧侶はこのような過激な活動はしない」と危惧する。一部の報道では、969の活動には現政権が関与しているとの見方もあり、11月8日に予定されている総選挙が近づくにつれて969の活動が活発になる恐れもある。

宗教ごとに習慣や思想は異なる。だが「多宗教」のガンさん一家のように、お互いを思いやる心を持つことで、初めて宗教が持つ本来の役割が発揮されるのではないだろうか。