「失踪をなくせ!」、ミャンマー人技能実習生の送り出し機関K&Kサービスが奮闘

K&Kサービスとミャンマーの展望を日本語で力説する社長

働きながら技術や知識の習得を目的とする日本の「外国人技能実習制度」が、送り出し国のひとつミャンマーで盛り上がってきた。ミャンマーでは2014年に約350人の若者が海を渡った。しかし、ミャンマー人実習生の失踪率は42%に上るなどの問題が発生するなど、送り出し機関は悩みを抱えている。

ヤンゴンのダウンタウンに事務所を構える大手送り出し機関K&Kサービスでは、2014年に98人の実習生を日本に送り出した。その失踪率は驚異の7%。失踪率が低い理由について、「派遣前に日本語能力をできる限り引き上げること」「日本に渡航した後も実習生へのケアを継続すること」の2つをK&K社長(ミャンマー人)は挙げる。

日本語対策をみると、日本語教師として日本人女性を雇っていること、クラスをレベル分けしていることの2つが柱だ。かつてはミャンマー人の先生だけだったが、日本人を2人雇用した。これに伴い、初心者から上級者までのレベルに合わせた日本語の授業を提供することが可能になった。

上級クラスでは、日本企業で働くために重要な「報・連・相」についての授業もある。K&Kは、日本語検定4級のレベルに達したミャンマー人しか派遣しない。4級とは簡単な日常会話ができる程度。日本で生きるために最低限必要なことを教えている。

K&Kがこうした取り組みをする理由は、失踪の最大の原因のひとつ「言語の壁」を突き破ることにある。工場に派遣された実習生を例にとれば、機械の使い方を教わったり、日本人従業員と意思疎通をとったりする際に、主に日本語を使うが、多くがそれを難しいと感じている。

日本語授業の様子。この授業では「報・連・相」について日本人女性講師が教える

日本語授業の様子。この授業では「報・連・相」について日本人女性講師が教える

派遣中の実習生に対するケアも万全だ。機械化した日本の社会では、仕事のスピードがミャンマーとは違って格段に速い。そのスピードについていけない実習生が多いのが現状。そういう実習生にはインターネットを通じて悩み相談に乗るほか、漢字の読み方や日本の習慣についての質問をほぼ24時間体制で受け付ける。

また、日本のスタッフが定期的に実習生に電話をかけ、家庭訪問するなど手厚くサポートする。実習生は、ヤンゴンのK&K本社に対しても、日本で困っていることやその解決方法について「報・連・相」している。

K&Kの社長は、自身も類似した制度を利用して韓国で働いた経験をもつ。だが一番好きな外国が日本だと言い切る彼は「日本でミャンマー人の失踪率が増えることで僕の国の評判が下がるのが悔しい」と憤りを覚えている。

「目標は、自分の会社を大きくすることではない。K&Kを他の送り出し機関のモデルになるようにしたい。業界全体の底上げを図り、これから発展していくミャンマーのコアな部分を担える人材を作りたい」。ミャンマーを愛する社長の強い思いは、これから発展していくミャンマー社会にとって決して小さくない支えとなりそうだ。