セブ市・オスメーニャ墓地の近くに住む人たちを強制的に別の地域に移住させるプロジェクトを市当局が進めている。家の解体が間近に迫ったロッニ・チャベスさんは「セブ市当局は家を壊すだけでなにも支援してくれない。移住後の仕事と家を保証してほしい」と不満を口にする。
ロッニさんは50年間、この地域に住み続けている。サリサリストア(フィリピンでよく見られる商店)を営み、収入は月に約5000ペソ(約1万3000円)。ところが強制移住により店の閉店を余儀なくされるため、収入はゼロになる。新たな仕事を現在探しているが、当面は、ベトナムで働く娘からの仕送りを頼りに生きる。また家を取り壊された後は、移住先に家を建てるお金がないため、安く借りられる家を探している。
セブ市は移住先を指定するだけで、移住に必要な資金や住居、仕事など、移動後のサポートはしてくれない。「私はこの場所に住み続けたい。可能ならばこのプロジェクトをストップさせたい」。市当局が解体している最中の家を見つめながら、ロッニさんは物寂し気に語った。
ロッニさんのように移住が間近に迫る人もいれば、まだ数カ月は家が撤去されない世帯もある。12月ごろ移住予定のヘルニヨ・マルビニヨさんは「私たちが移住しないといけないのは(土地が市のものだから)納得できる」と市の立場への理解を示したうえで、「それでもセブ市の進め方、サポート体制の不備には同意できない」と市の強引なやり方に不満を抱える。
このプロジェクトで強制的に移住させられるのは約40世帯。教会から市がこの土地を購入したことからプロジェクトが始まった。移住先はオスメーニャ墓地から徒歩5分ほどの近場であり、外で仕事をする人はそのまま仕事を続けられるが、ロッニさんのように仕事を失う人もいる。
「私たちのニーズに沿った適切なプロジェクトを!」。撤去作業が進む家の壁に住民の想いが書かれていた。