ミャンマーの庶民のライスヌードル「モヒンガー」に日本のラーメンは勝てるのか? 

庶民で賑わうモヒンガーの屋台(ヤンゴン)

ミャンマーで庶民に親しまれる麺料理(ライスヌードル)といえば「モヒンガー」。ヤンゴンには日本のラーメン店も進出しているが、モヒンガー人気を足がかりに集客につなげるのはなかなか難しいようだ。

■来店数は10倍以上の差

ヤンゴンにはおしゃれなショッピングモール「ジャンクションスクエア」がある。ここにはモヒンガー屋とラーメン屋の両方が出店している。その2つを比べてみた。

モヒンガー屋の「シュイーポーミャティン」は、モヒンガーを1200チャット(約120円)で売る。1日の客数は約300人。1カ月の売り上げは1000万チャット(約100万円)を超えるという。物価の安いミャンマーで、しかも単価の低いヌードルとしては驚異的だ。

一方の日本のラーメン店「リトル東京」(経営は中国人)。醤油ラーメンの値段は4300チャット(430円)。店員によると、1日の客数は20~30人という。モヒンガー屋の10分の1以下だ。

■エリート大学生も「ミャンマー料理が好き」

世界中を席巻しつつあるラーメンがミャンマーで人気がないのはなぜか。その理由は2つある。

1つは価格だ。ミャンマーでは食事をするのに2000チャット(約200円)もかからない。物価が高い先進国の飲食店は、当然だが、値段設定の面で高いハードルがある。ミャンマーの経済はまだ、タイやフィリピンのようなステージに到達していない。

2つめは、ミャンマー人が伝統料理を好んで食べることだ。ミャンマーの人たちは「安いから」という理由だけでモヒンガーを選ぶわけではない。上流階級が集うヤンゴン大学の学生は「ラーメンは食べたことがある。でもモヒンガーのほうが好き。私は西洋料理も何度も食べたことがあるけれど、ミャンマー料理がいい。なぜなら私はミャンマー人だから」。彼女の友たちの多くも、同じ意見だという。

ミャンマーでは今も、「屋台」が根強い人気を誇る。屋台のモヒンガーはショッピングモールのモヒンガーより安く、一般的な価格は400チャット(約40円)。味に大差はない。

大学生を中心にミャンマー人30人に「モヒンガーを食べるとしたら、屋台とショッピングモール、どちらが好きか」と尋ねたところ、結果は、屋台派が17人とショッピングモール派13人を上回った。屋台を好む理由は「安い」「美味しい」「好きな時に行ける」などだった。

2011年に始まった経済改革で、外国資本が相次いで参入しつつあるミャンマー。海外の影響を強く受け、ミャンマー人の食文化はどうなっていくのか。経済指標を追うだけでなく、伝統文化の動向も注視するとおもしろいかもしれない。