「赤はフィリピンでは幸せを表す色なの」。そう話すのは、セブ島タリサイ市ダンムロで2人の娘の誕生会を開いていたエリタ・ベロンドさん(39)。主役の2人の娘は真っ赤な服を着ていた。
フィリピンでは誕生日は特別な日だ。エリタさんの一家では、自身が家政婦で1日300ペソ(約780円)を、夫がドライバーで150ペソ(約390円)を稼ぐ。ところが誕生会ではケーキ、チキン、ダチョウ、野菜などと豪勢な料理が並ぶ。「3000ペソ(約7800円)もかけた。費用は近所の友だちが貸してくれた」とエリタさん。ざっと計算して、誕生会の費用は一家の1週間分の収入だ。
赤といえば、マクドナルドを凌ぐ不動の人気を誇るファストフードチェーン「ジョリビー」がある。赤を基調とするハチ(ビー)の姿をしたマスコットキャラクターは、子どもの心をつかむ。ジョリビーの店内では、嬉しそうにフライドチキンをほおばる子どもの姿も。赤い帽子をかぶった店員の笑顔も子どもに幸せ(ジョリー)を運ぶ。
エリタさんの家族にとっては、ジョリビーで誕生会を開くことが夢だ。「(家族が6人もいるから)ジョリビーだと5000ペソ(約1万3000円)はかかってしまう。今の私たちには無理。でもこうやってみんなにお祝いしてもらっているから十分幸せ」と満面の笑みを浮かべる。
赤にはほかにもいろんな意味がある。セブの大学生リア・モンカダさん(19)は「赤は愛を象徴する色」とにっこり。同じく大学生のクイーン・ハハさん(20)も「赤は笑顔の意味もある。私たちは貧しいけれど、大きな笑顔を他人に見せることで、お互いに幸せになる。笑顔は、何か悩んだ時の一番の特効薬」と言う。
しかしフィリピンの国旗だと、赤は血や戦争の意味を指す。赤色から見たフィリピン。幸せか、戦争か。同じ赤なら「幸せの赤」のほうが断然いい。