「大学に行っていなかったら、きっと今ごろ、親と一緒にウェストピッカー(ごみを拾って生計を立てる人)になっていたと思うよ」。セブ・イースタン大学4年生 のマキシミノ・ナクアくん(19)はこう話す。
ここはフィリピン・マンダウエ市イナヤワン地区のごみ山。かつては500人以上のウェストピッカーが仕事していたが、2015年1月に閉鎖。現在は100人程度にまで減ったという。
マキシミノくんの父はウェストピッカーだった。収入が1日200ペソ(約520円)と多くなかったこともあって、マキシミノくんは公立高校を卒業したら、父と一緒にごみを拾おうと決意していた。ところがそんな時、政府が支給する奨学金の存在を知る。大学進学のために猛勉強し、晴れて大学に入った。2016年に卒業する予定だ。
マキシミノくんは「(ごみ山の閉鎖によって)ウェストピッカーから脱却した400人の多くは、子どもの時から教育を受けていて、サリサリストア(コンビニストア)の経営をはじめ、街中で仕事を見つけた。残りの100人の多くは、十分な教育を受けていないから、ウェストピッカーを続けている」と、閉鎖されたごみ山で暮らす人たちの状況を説明する。ごみを積んだトラックが入ってこなくなったため、収入は激減しているという。
マキシミノくん一家の家計はかつて、1日の収入200ペソ(約520円)に対し、「(支出は)食べ物に100ペソ(約260円)、学校への交通費に50ペソ(約130円)、これ以外に(水や衣料服など)50ペソ(約130円)を払うと、残りはゼロ」。こうした事情からマキシミノくんは大学への進学を諦めていた。そんな彼の救世主となったのが奨学金だった。
ただ進学できた今も生活は貧しい。両親が離婚したため、現在は母親が1個100ペソ(約260円)の枕や1台400(約1040円)のベッドを売り、生計を立てる。「きのうは枕が売れなかったから収入はゼロだった。水をたくさん飲んで空腹をしのいだ」(マキシミノくん)
父親のようにウェストピッカーにならずに済んだマキシミノくんは「大学を卒業したら、ホテルのマネージャーになって、家族を支えたい」と目を輝かせる。