インドネシア人はネコが大好きだ。驚くのは、インドネシア大学の教室の中でネコが昼寝していても、インドネシア人はその光景を温かく見守ること。ネコ好き大国インドネシアではいま、“ネコビジネス”が人気を博している。
「ワルン・ティンギ」。ここは首都ジャカルタのコーヒーショップ。たいていのコーヒーは一杯2万5000~4万ルピア(220~350円)で提供されるが、25万ルピア(約2200円)の高級品も置いてある。コーヒーの実を食べたジャコウネコの糞から採取されるコーヒー「コピ・ルアク」だ。ジャカルタの中高所得層の間で人気が高い。店内を見回すと、コピ・ルアクを注文していたのは、仕事の合間にやってきた会社員の男性が多かった。コピ・ルアクは、店によっては一杯80万ルピア(約7000円)もするという。
値段の高さも驚きだが、驚くべきはその味だ。コピ・ルアクは通常のコーヒーと比較して味に苦みが少なく、ブラックコーヒーが苦手な人でも飲める、と評判がいい。糞に混じったコーヒー豆だが、その味とブランド力から「飲むのに抵抗はない」とインドネシア大学の学生ブンくんは言う。
ジャコウネコではないが、インドネシアにはネコカフェもある。2015年に南ジャカルタにオープンしたネコカフェ「キューティーキャッツカフェ」は、癒しを求め、ネコ好きの中高所得層のインドネシア人が集まる。客のほとんどは十~二十代の女性だ。入場料は1時間5万~7万5000ルピア(440円~660円)。店内には17匹のネコが放たれていて、ネコを撫でながらコーヒーを飲んだり、ネコをモチーフにしたスイーツを味わったりすることができる。
店には平日、休日問わず、多くの客が来る。キューティーキャッツカフェのオーナー、リサさんは「1時間当たりの客数を20人に制限している」と話す。ネコカフェは、マンション住まいなどで、ネコを飼いたくても飼えない人をターゲットにしているそうだ。
インドネシア人はそもそもなぜネコ好きなのか。インドネシア人いわく、ネコはイスラム教徒にとって特別な動物。イスラム教の預言者、ムハンマドはネコ好きで、「ムエザ」という名のネコを飼っていたためとされる。イスラム教徒が90%を占めるこの国でネコ好きが多いのもうなずける。
ジャカルタではいま、中間層が増えている。5%を超える経済成長率を背景にお金に余裕ができる一方で、仕事のストレスで癒しを求める需要が高まりつつあるのだろう。中高所得層向けのネコビジネスはますます熱くなりそうだ。