風化していくネパール大地震、難民を助ける会「支援はまだまだ必要」

難民を助ける会が建設した仮設小学校で勉強に励む子どもたち(難民を助ける会のホームページから引用)

4月に発生したネパール大地震が日本では忘れられつつある中、被災地支援を続けるNGO「難民を助ける会(AAR Japan)」の松本夏季さんは10月28日、都内で同団体が開いた報告会で「復興はまだまだ進んでいない。多くの支援が必要」と強く訴えた。

AARは現在、首都カトマンズから車で3時間の距離に位置するダディン群タサルプー村を中心に、5つの村で計26棟の仮設小学校を建設している。「毎日過ごす学校が危険な状態では、子どもたちが地震直後のことを思い出してしまう。新たな環境で勉強することが、復興に向けて前を向くことにつながる」(ネパール事務所の土川大城駐在代表の言葉を引用)

タサルプー村では元来、石や土で作られた家が多い。AARが建てる仮設小学校は、耐震面や地域の手で維持・改造することを考慮して、鉄骨構造にレンガの壁、トタン屋根というデザイン。仮設とはいえ、10年は使用できる強固な作りだ。1棟の校舎を建てる費用は約100万円。1棟は2つの教室から成り、各教室40人の児童が授業を受けることができる。報告会でAARが流した映像のなかで女子児童のひとりは「私の夢は医者になること。学校を作ってくれてありがとう」と嬉しそうに話していた。

支援団体が多く入るカトマンズでは復興が順調に進む一方で、タサルプー村のような山間部は課題が山積みだ。生活に最低限必要なものは確保できるようになったものの、公共施設の再建は全く手を付けられていない。

復興の遅れに追い打ちをかけるのが「ガソリン価格の高騰」だ。ネパールで9月20日に交付された憲法をめぐり、インドとの関係が悪化。インドに頼っていたガソリンや天然ガスの供給が停止した。「山間部への移動は車が不可欠。ガソリンを切り詰めて活動を続けている」と松本さんは苦しい胸中を明かした。

ネパール大地震では8773人が死亡、50万5745棟の家屋が全壊したとされる。タサルプー村でも1229世帯のうち9割が全壊または半壊した。