経済発展でインドネシアは「肥満大国」になる? ジャカルタの子どもの3割が太っている! 

カリマンタン島バンジャルマシンでインタビューに答えてくれた小学1年生たち

インドネシアの首都ジャカルタにあるショッピングモール、グランドインドネシアでよく見かける「太った子どもたち」。ジャカルタに住む子どものおよそ3人に1人が児童肥満といわれるゆえんだ。経済発展の陰で、インドネシアでは子どもの健康が深刻な問題になりつつある。

インドネシア健康省の2013年の調査によると、同国の5~12歳児の児童肥満率は平均で18.8%。とりわけ高いのがジャカルタ。30.1%にも上る。

首都と地方の子どもでは何が違うのか。そのひとつが食の西洋化だ、と技術系コンサルタントのインドネシア人男性アハマドさんは指摘する。「ジャカルタでは数年前と比べ、(西洋の)ジャンクフードやファストフードを食べることが圧倒的に増えた」

ジャカルタと南カリマンタン州の州都バンジャルマシンでそれぞれ子ども7人を対象に食生活を比べてみたところ、大都市の子どもほど「ファストフード好き」ということがわかった。

インドネシア人が日常的に食事をするワルン(屋台)で出されるナシゴレン(焼き飯)やサテ(焼き鳥)などのインドネシア料理は、味付けも、量もほとんど同じ。違いが顕著に表れたのは、マクドナルドやケンタッキーフライドチキン、ピザハットなどのファストフードやウェスタンレストランの利用回数だ。

バンジャルマシンに住む7歳の男の子、リコくんは「ご飯は普段、家で食べる。ミーゴレン(焼きそば)や鶏肉の炒め物など、インドネシア料理がほとんど。ファストフードやウェスタンフードは家の近くに店がないため、めったに行かない」と言う。ファストフードに大して興味はなさそうだ。

対照的なのが、ジャカルタで暮らす10歳の女の子アニちゃん。「週末のほとんどが外食」と嬉しそう。フライドチキンやハンバーガーが大好物。「平日も、ピザのデリバリーサービスをよく利用する」と話すアニちゃんは太り気味だ。

アニちゃんのようなニーズを受けてか、ジャカルタではファストフードのデリバリーサービスが充実している。便利で手軽に食事を楽しめるため、ジャカルタっ子の間で人気は高い。

ジャカルタのバイクタクシー会社ゴジェックは、「ゴー・フード」という食事の宅配サービスを始めた。このサービスを使えば、注文する人は食べたい店の料理をゴジェックの携帯アプリケーションを使ってオーダーし、届け先を指定するだけ。1時間以内に、ゴジェックのドライバーが料理を配達してくれる。価格は、食事代プラス宅配代として1万5000ルピア(約135円)と安い。11~3月の雨季は外出も億劫なことから、普段の食事として利用するリピーターは多い。

ジャカルタではまた、韓国風の焼肉や日本風のしゃぶしゃぶの食べ放題も人気を博す。ジャカルタをはじめインドネシアの各都市には焼肉・しゃぶしゃぶチェーン店「ハナマサ」がある。デザートの品ぞろえも豊富。価格は15万ルピア(約1350円)と高めだが、ジャカルタの店舗では特に休日は大勢の人でにぎわう。

豊かになってお金にゆとりができれば、好きなものをわが子に食べさせてあげたいと思うのが親心。ただ結果として、高カロリー、栄養バランスが偏った食事をとらせれば、子どもは太っていく。経済発展と並行して食育をいかに推し進めるかがインドネシアでは今後課題になってくるといえそうだ。