自作の砂絵を掲げるソウルウィンさん。砂絵は、木綿に下絵を書き、接着剤をつけた後、色とりどりの砂を散りばめる。完成した砂絵は丸めて洗っても大丈夫だそう。写真の小さいもので3000チャット(約300円)
「1日で20 枚前後の砂絵を売る。観光シーズンだと1日5万~7万チャット(約5000~7000円)は稼ぐよ」。流暢な英語でこう答えるのはソウルウィンさん(47)。ミャンマー中部にあるバガン遺跡の一角で20年にわたって自作の砂絵を観光客相手に売っている。
厳かな表情の仏陀像、托鉢に向かう僧侶、バガン遺跡の夕日‥‥。ミャンマーの仏教文化をモチーフにした砂絵はどれも精巧で、最大都市ヤンゴンや第2の都市マンダレーからも買い付けにくる店があるほどだ。
商売なので波はあるものの、一般的なミャンマー人の日収(都市部で5000チャット=約500円)の10倍は稼ぐソウルウィンさん。商売の秘訣はと聞くと、こんな答えが返ってきた。
「ここは同業者が多いから値段の付け方がとても重要。ほかの店は外国人観光客に割高料金を付けるけど、うちはミャンマー人も外国人も一緒の値段。それがお客の信頼につながるんだよ」
商売を繁盛させるための強いこだわり。砂絵は小さいもので1枚3000チャット(約300円)から。他の店より2割ほど安い。「値引き交渉には応じない」とソウルウィンさんは言い切る。
バガンの寺院郡(パゴタ)は、カンボジアのアンコールワット、インドネシアのボロブドゥールと並ぶ世界3大仏教遺跡のひとつだ。バガンのパゴタは、1044~1299年のバガン王朝時代に築かれたもので、その数3300以上と圧巻。多くが、徳を積むために庶民が寄進したというから驚く。「善い行いをする」という教えは、ソウルウィンさんのビジネススタイルにも表れているのかもしれない。