2015年に殺されたジャーナリストは110人、3分の1が「紛争地以外」

2005~15年に世界で殺されたジャーナリストの数の推移。国境なき記者団の報告書から引用。赤は「殺害のターゲットまたは取材中」に殺された数。薄い青は立証できない数

パリに本部を置く非政府組織「国境なき記者団」は2015年12月29日、15年に殺されたジャーナリストの数は全世界で110人にのぼると発表した。このうち殺害のターゲットとされた、または取材中に殺されたのは67人。ターゲットとされたかどうか証明できないのが43人。これ以外にも、市民ジャーナリスト27人、メディア従事者7人も殺された。

犠牲者を最も多く出した国はイラクで11人。標的となって殺害されたのは9人、理由が明確にわからないのは2人だった。以下、シリア10人、インド9人、フランスとイエメン、メキシコ8人、南スーダン、フィリピン、ホンジュラス7人の順。殺されたジャーナリストの97%がその国の出身者で、3%が外国人だった。

15年の特徴は、殉職したジャーナリストの64%が「紛争地以外」で殺されたことだ。これは、犠牲者の3分の2が「紛争地」だった14年の真逆の傾向となる。その象徴となったのが、パリで1月7日に起きたシャルリー・エブド襲撃事件だ。イスラム過激派とみられる武装集団は、イスラムを挑発する風刺画を掲載した週刊誌シャルリー・エブドの本社を襲撃、8人のジャーナリストを殺した(被害者は合計12人)。

こういったジャーナリストの殺害はこれまで欧米諸国の中では起こらなかっただけに、この事件は大きな衝撃を与えた。同誌の発行人は10月、「ジャーナリストを紛争地に派遣したことはほぼなかったが、戦争のほうがやってきた」と話したという。

国境なき記者団によると、過激派組織「イスラム国(IS)」が支配するイラク北部のモスルにこの1年半で入ったジャーナリストはおよそ60人。うち43人が誘拐、13人が殺された。この中には後藤健二さんや湯川遥菜さんも含まれる。

国境なき記者団の試算では05年からこれまでに殺されたジャーナリストの数は合計787人。「紛争地での報道関係者を保護する」とうたう安全保障理事会決議2222号が15年5月27日に採択されたにもかかわらず、残虐行為を働く非国家テロ集団に対し、多くの国家はいまだ無力だ。国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長は8月、「ジャーナリストをターゲットとする暴力が減らないことを深く憂慮する」とのコメントを発表している。

殺害以外では、15年に人質となったジャーナリストは54人を数えた。内訳はシリア26人、イエメン13人、イラク10人、リビア5人。また、国家に拘留されたジャーナリストは153人で、中国の23人を筆頭に、エジプト22人、イラン18人、エリトリア15人、トルコ9人などが続く。