「農家=貧困」のサイクルを知識の共有で解決したい、ミャンマー人若手起業家にインタビュー

 グリーンノベーターの設立経緯を説明するイェンさん。絵の中に書いてあるグリーンウェイは2011年にイェンさんらが作った団体で、グリーンノベーターの前身

ミャンマーの首都ネピドーにあるイエジン農業大学の卒業生3人が集まって2015年12月に立ち上げた農業コンサルタント会社がある。その名も「グリーンノベーター(Greenovator)」(本社:ヤンゴン)だ。ミッションは「農家=貧困」の負のサイクルを断ち切ること。経営者の1人イェン・イェン・ピューさん(27)に会社やミャンマー農業への想いを聞いた。

――ミャンマーの農業が抱える課題は何か。グリーンノベーターが最も解決したいものは。

「“農家=貧困”というサイクルを断ちたい。ミャンマーでは農業従事者が国民の7割を超える。国の主要産業だが“農業は儲からない”“農家の子は農家”という考えが残り、投資が進まず、新しい技術の導入に至らない現状がある。そこでグリーンノベーターは、農家と農業の専門家をつなげる場を提供し、課題の解決を目指している。農家が自立し、持続的な農業を実現したい」

――グリーンノベーターが考える「持続的な農業」とは。

「私たちが考える持続的な農業は、機械や農薬の購入を支援して収穫を増やすことではない。農家ができる範囲でコストの削減と環境配慮を両立させることだ。私たちが農家に直接指導する時は、コンポストを使用した有機野菜の栽培を推奨している。ミャンマーでは有機野菜への需要は高まりつつあるが、取り組んでいる農家は少ない」

――農業に関連する様々なサービスをグリーンノベーターは提供しているが、その中でも人気のサービスは何か。

「インターネットやアプリを使った農業アドバイスサービスが人気。他にも農業大学で学んだことやNGO、政府系の開発援助機関で働いていた経験を活かしたサービスを提供している。例えば、英文の農業関連の報告書・書籍をミャンマー語に翻訳している。英語ができるミャンマー人はいても、ミャンマーの農家の状況を理解して適切な訳をできる人は少ない。私たちは知識も経験もある」

――どうして組織で働き続けるのではなく、起業を選んだのか。

「組織に所属していた時は制約が多くあった。オックスファムや国際協力機構(JICA)のプロジェクトで働いていた時は、農家の課題に気付いても柔軟に対応できなかった。自分たちの会社を持てばより効果的な解決策を提案できると思ったから」

――収益はどのように得ているのか。

「グリーンノベーターが運営する農業に特化した情報共有サイトの広告費から収益を得ている。サービスは基本無料で提供している」

――経営者の3人は十分な給料を得ていないのでは。

「今のところは自分たちの給料を賄えるだけの収益を得ていない。他の仕事と掛け持ちしている。大変なこともあるけど、今までと違ってミャンマー農家の抱える課題に対して、より最適と思う解決策を考え、実行できる。それがモチベーションとなっている」

――起業して3カ月、今後グリーンノベーターはどのような取り組みをしていきたいか。

「私たちはこれからも、収益ではなく、農民のために働くことを重視していく。会社の規模を拡大させたら、今ある自分たちの知識や農業情報共有サイト上に蓄積された知識を活用して農業学校を設立したい」