国際協力機構(JICA)の客員専門員で、コーヒー豆の輸入・販売を手がけるミカフェート(東京・港)の川島良彰社長(59)は1月30日、「ルワンダコーヒー支援と協力隊員の活躍」をテーマに神戸市内で講演した。「ルワンダ人のバリスタ(コーヒーを淹れる職人)を一流に育てたい」と意気込みを語った。
2月6日には首都キガリでJICAが主催し、バリスタ向けの研修セミナーを行った。土曜日にもかかわらず23人のルワンダ人が参加し、コーヒーの抽出方法についての説明に熱心に耳を傾けた。研修の最後は、参加者によるエスプレッソとドリップの抽出競技が行われ、大いに盛り上がったという。
川島氏によると、ルワンダで販売されるコーヒーの味は決して良くない。抽出してから3~4時間経ったコーヒーがお店で出されることもあるという。多くのルワンダ人はコーヒーを飲まないため、抽出方法を熟知していない。一流バリスタを育成することでコーヒーの味を上げ、美味しいコーヒーを流通させたい考えだ。
また、コーヒーを観光客にアピールすることで、外需拡大への期待も膨らむ。2013年は、主に欧米から86万4000人の観光客がルワンダを訪れた。川島氏は「観光客が美味しいルワンダコーヒーをお土産に持ち帰ることでこの国のコーヒーの評判が上がり、輸出拡大につながるのでは」と期待を込める。
ルワンダコーヒーの品質を上げるには、栽培技術の遅れも大きな足かせとなっている。ルワンダ政府は農民の技術指導は行うものの、技術改善には及び腰だ。川島氏は「私はルワンダに常駐できない。また、ルワンダ政府には常にコーヒーの品質をチェックしてくれる機関がなかった」と語る。
そこで、ルワンダで活動する5人の青年海外協力隊員に、川島氏が栽培技術を指導し、継続的に支援できる体制を作りつつある。指導を受けた隊員は、生産者への聞き取り調査や畑での実技指導などを行っているという。だが協力隊員の任期は2年で、農業経験者は5人中1人と課題が残る。
兵庫・大阪を中心に展開するコーヒーチェーン店「ヒロコーヒー」を退職し、ルワンダ東部のルワガマナ郡に赴任した女性隊員は農業経験者なし。コーヒーの栽培方法は熟知していない。ただヒロコーヒーで働いた経験から、抽出は得意。「自分の特技を生かして生産者に美味しいコーヒーを知ってもらいたい」と語る。この隊員は活動地でルワンダ人を招き、定期的にコーヒーのテイスティングを行っているという。
ルワンダコーヒーは、標高1500~2200メートルの農場で栽培されるブルボン・アラビカ種だ。甘い香りを引き出す肥沃な火山性土で栽培され、豊かな酸味とコクが特徴とされる。ルワンダは「千の丘の国」と呼ばれ、国全体がコーヒーの栽培に適した高地に位置する。コーヒーは同国の主要な輸出品目の一つで、総輸出額の約25%を占める。ルワンダ国内では約40万人の農民がコーヒー産業に従事している。
2015年の日本のコーヒー生豆輸入量で、ルワンダは291キログラムで19位。アフリカではケニアに次ぐ5位だ。アフリカのトップ3はエチオピア、タンザニア、ウガンダが占める。ルワンダは過去10年で平均7%の国内総生産(GDP)成長率を維持し、コーヒーだけでなく、新たな投資先として世界から注目されている。