飲食店の予約をするだけで、途上国に住む子どもたちへ給食を届けることができるアプリがある。発案したのは、現役の大学生。途上国支援の思いとアルバイトでの経験を生かし、2年前に起業。自分の届けた給食の数をアプリで確認できるなど、ユーザーが自分の貢献を実感できるのが特徴だ。
アプリを手がけるのは「テーブルクロス」(東京・四谷)。立教大学の学生、城宝薫さん(22)が2014年6月、知人の協力を得て起業。社名と同じアプリ「テーブルクロス」を開発、提供している。
テーブルクロスは、ユーザーがアプリを使ってネットや電話で飲食店に予約を入れると、飲食店が顧客1人あたり180円を支払う仕組みになっている。このうち20円がアジアやアフリカの途上国で教育支援の活動を行う日本のNPOに給食費として支給される。現在、契約している飲食店は、東京都内を中心に約1200店舗。最近は九州や東北など、首都圏以外にも広がる。また資金提供を受けるNPOは、国際協力NGOセンター(JANIC)の正会員になっている10の団体。
起業を思い立った原点は、幼い頃家族で訪れたインドネシアでストリートチルドレンの存在を知ったことだという。「自分とほとんど年齢の変わらないストリートチルドレンを数多く見かけ、学校に通えない彼らを何とかしてあげたい」との思いを抱き、途上国への教育支援に関心を持ち続けていた。
アプリのアイデアは、飲食店関係の広告会社でのアルバイト経験が生きている。飲食店が、ぐるなびや食べログといったサイトに店名を表示させるためには定期的に広告掲載料を払う必要がある。ここに目をつけ、予約が成立してから支払う仕組みに変えた。こうした工夫で客単価が低い飲食店が契約しやすくした。
またアプリには「共感」のコンセプトを盛り込んだ。その一つが、届けた給食数を確認できるエンジェルカウンターと呼ぶ機能をアプリにつけた点だ。
城宝さんは「店にある募金箱では、自分の募金が実際にどう活用されたのか実感が湧かない。自分がどれだけ社会貢献したのかをアプリを通して見ることができれば、人々が募金をするモチベーションになると思った」と話す。提携する飲食店のオーナーからも「目の前のお客様を幸せにするだけでなく、途上国の子どもたちも幸せにできて嬉しい」といった意見をもらったという。
現在の課題は、アプリの利用者を増やすこと。現在はひと月あたり500人程度にとどまるが、毎日約1万件の予約に増やしたいという。ユーザーを増やすため、今後は週に1~3回の講演会に加え、CSR(企業の社会的責任)の一環として企業に活用してもらえるよう提案する計画だ。城宝さんは「例えば、社内の会合をテーブルクロスを通して予約すれば、給食支援の実績を見える化できる」と話す。