セブで“健康を売るスムージー”は流行るか? インスタグラムで若い世代にアプローチ

落ち着いた雰囲気の店内は1人でも立ち寄りやすいと好評

自然食材にこだわったスムージー・ジュースバー「mooshi」が1月、フィリピン・セブで4店舗目をオープンさせた。健康志向を前面に打ち出したこの店の特徴は、写真投稿アプリ「インスタグラム」やフェイスブックなどのSNSを使い、PR効果を狙ったユニークな企画を実施していることだ。

フィリピンではここ数年、インスタグラムやフェイスブックの利用者数は急激に拡大している。フェイスブックブックのユーザー数は世界8位(アジア3位)だ。ユーザーの多くは20代をはじめとする若い世代だ。mooshiのキャシー・アンヘレスさんは「事業を立ち上げる前に調査をしたとき、若い人からの反響が大きかった。いまは客の半分は若い人たちだ」と話す。SNSは若い世代をターゲットにする店には最適な宣伝方法だ。

フィリピン大学(UP)セブ校の学生20人に「よく使うアプリは何か」と質問したところ、80%の学生がインスタグラムと回答した(フェイスブックはほぼ100%)。UPセブ校で心理学を専攻するマリさん(20)は「フィリピン人はどんな瞬間も写真や動画に収めたがる。特になにもない日なのに写真を撮って盛り上がる」と苦笑いして話す。

mooshiは、インスタグラムを活用したフォトコンテストを行っている。コンテストに参加するにはまずmooshiのアカウントをフォローしなければならない。投稿する写真は、mooshiが販売する飲み物や食べ物が写っていること。#mooshiloveとタグを付けて投稿すれば応募完了だ。投稿した人の中からキャシーさんが毎週火曜日、最も気に入った写真を発表する。

mooshiが活用しているのはSNSだけではない。mooshiは結婚式やパーティーなどで出張サービスを提供しているが、個人向けには、オンライン注文アプリ「フードパンダ」(本社:ドイツ・ベルリン)を使ってデリバリーしている。2012年5月に始まったフードパンダは発展途上国を中心に普及しているサービスで、現在はアジアなど24カ国、500都市、3800店舗と契約を結んでいる。アプリを起動し地域とお店の名前を入れればすぐに注文することができる。

フィリピン科学技術アカデミー(NAST)が発表した2012年のデータによると、フィリピン人の死因1位は「生活習慣病」だ。1年間で30万人が生活習慣病で命を落とした。直接の原因は、喫煙、運動不足、不健康な食生活など。こうした状況をビジネスチャンスととらえ始めたのがmooshiだ。有機栽培にこだわり、またチアシードやモリンガといった健康に良いとされる食材を提供する。

ただ値段は安くない。mooshiの飲み物は小さなサイズで125ペソ(約375円)、大きなものでは195ペソ(約385円)と、他のレストランと比べても値段はかなり高めだ。小サイズであってもコンビニで売っている500ミリリットルのフルーツジュースなら3~4本、330ミリリットルのコカ・コーラでは5本は買える。

フィリピン人は肉好きだ。mooshiは肉中心の食生活の改善に注目し、健康志向へと促そうとしている。新しいものに興味がある上流階級や若者をターゲットに、SNSを使ってどこまで健康を売り込めるのか。

キャシーさんが更新するmooshiのインスタグラム

キャシーさんが更新するmooshiのインスタグラム