車を走らせて電気を貯め、それを家電製品に供給できる画期的なシステムがある。「エクスチャージシステム」だ。開発元であるエクスチャージ(神奈川・横浜)の澤幡知晴社長は3月22日、経済産業省の補助金事業「飛び出せJAPAN!」の成果報告会で講演し、「途上国の未電化地域に電力を届けたい」と意気込みを語った。
エクスチャージシステムとは、車が走行中に発電し、使わなかった電気を専用のサブバッテリー(チャージャー)に貯めておき、携帯電話などの家電製品に供給するというもの。チャージャーは着脱が可能で、専用のコネクタを通して自動車のバッテリーから充電する。これまでは車が作り出す余剰電力は活用できず、無駄になっていた。澤幡氏は「これで途上国の車が“走るジェネレーター(発電機)”になる」と期待を口にする。
エクスチャージシステムは従来の発電機と違って、騒音を出さない。給電する時にガソリンを使う必要もないため、環境にも良い」。途上国の未電化地域で多く利用されるソーラーパネルについて同氏は「ソーラーパネルのコストは数十万円と高い。天候の影響も受けやすい。エクスチャージシステムは晴れていなくても大丈夫だ」とメリットを説明する。
エクスチャージシステムでは、チャージャーに電気を2~3時間で貯められる。チャージャーの能力によって異なるが、フル充電の場合は冷蔵庫を12~14時間動かせるという。チャージャーの寿命は5年ほどで、車のバッテリーの寿命とほぼ同じ。価格はおよそ数万円。メンテナンスも簡単だ。
エクスチャージシステムを搭載できるのは車だけではない。澤幡氏は2015~16年に西アフリカのベナンで市場調査を実施した時、この国では自動車よりもバイクの方が普及していることを知った。その後、インドでバイク専用チャージャーを作った。「ベナンの人口は少ないが(約100万人)、西アフリカの3億人市場への玄関口となる。最終的にはバイク専用チャージャーを1000円ほどで販売できるようにしたい」と意気込む。
エクスチャージの事業対象国は現時点でバングラデシュ、インド、タイ、エチオピア、ベナンの5カ国だ。インドとバングラデシュでチャージャーを製造し、タイ、エチオピア、ベナンに販売する。日本では専用コネクタの開発、チャージャーの製造を手がける。今後はインドで製造したバイク専用チャージャー2000セットをベナンに輸出する予定だ。
澤幡氏は、開発コンサル会社アイ・シー・ネット(さいたま)が2014年1月に実施した「飛びだせJAPAN!」コンテストで優秀賞を受賞。獲得した補助金で翌月、エクスチャージを設立し、市場調査、試作機の実験、販路開拓をスタートさせた。「途上国で将来的、仮想(バーチャル)電力会社を作りたい」との計画をもつ。