日本人経営のロードサービス会社SAT、ミャンマー全土の車トラブルに対応!

「ここミャンマーでは第2次世界大戦でたくさんの日本兵の方が亡くなられた。『日本のロードサービス』という誇りを持って、自国の旗を汚さないよう頑張りたい」と話すSAT JAPAN ROAD SERVICEの山口弘隆さん

日本人が作ったミャンマー初の24時間ロードサービス会社SAT JAPAN ROAD SERVICEがある。2014年の設立から2年をかけ、ミャンマー全土で整備会社など160店舗とのネットワークを構築。国内のどこで車トラブルが起きても駆けつけられる体制を作った。

SATは会員制をとる。加入すると、バッテリーが上がったり、キーを車内に閉じ込めてドアをロックしてしまった場合などに対処するロードサービスが無料で受けられる。年会費は10万チャット(約1万円)。会員数は現在600弱。会員でなくても有料でサービスを受けられ、実際の利用は9割が非会員だ。

「(ヤンゴンやマンダレーなどの)街中なら、救援の依頼から約1時間で駆けつけられる。今後は30分以内の到着を目標にしている」と社長の山口弘隆さんは語る。

非会員の利用が多いことについて山口さんは「未来にお金をかけるのが好きではないミャンマーの人たちは、自動車保険の加入率が5%と低い。しかもそのほとんどがレンタカーなどで加入が義務付けられているもの」と言う。SATは今後、ミャンマーの行政機関と協力して、SATのロードサービスの利用者をより増やしていく見込みだ。

「ロードサービスは間違いなくこれからのミャンマーに必要。ミャンマーの発展を支えるのは交通インフラ。交通インフラは道路を作って車を走らせるだけでは不十分。それを下から支えるのがロードサービスだ」と山口さんは誇らしげに語る。

日本のロードサービスではバッテリー上がりなどの利用が多いが、SATの利用件数で一番多いのは「事故」。SATは月に30~60件、路上の事故による走行不能車を運搬する。交通量が増え続けるヤンゴンでは自動車の事故が多い。山口さん自身もヤンゴンでしばしば事故を目にすると言う。

ヤンゴンでは交通渋滞がひどい。「事故を未然に防ぐ交通安全活動もボランティアでしていきたい」と山口さん

ヤンゴンでは交通渋滞がひどい。「事故を未然に防ぐ交通安全活動もボランティアでしていきたい」と山口さん

「事故を起こすと警察に届けなければいけない。だがそうすると最大100万チャット(10万円)の罰金が科せられる。それを逃れようと、警察に見つかる前の救援をSATに求める人が多い」(山口さん)

山口さんがSATを立ち上げたのは50歳のとき(現在は52歳)。日本から自己資金3000万円を元手にやって来た。「そもそもロードサービスという概念を知らないミャンマーの人たちに協力してもらうには、国内の自動車関連の店舗を一軒一軒回るしかなかった」と振り返る。

ミャンマーで日本の常識は通用しないという。山口さんは「ミャンマーで、日本の自動車整備技術は役に立たない。なぜなら、日本では車が故障すると破損したパーツを交換することがほとんどだから」と話す。機材や部品が乏しいミャンマーでは、ありあわせの部品でいかに修理するかが問われる。

「交換の技術しか持たない日本の若い技術者は、ミャンマー人から『こんなものも直せないのか』とばかにされてしまう」(山口さん)。逆にシニア世代の日本人整備士の方がミャンマーでは活躍できるかもしれない。

多くの困難にもかかわらず、ミャンマーのために奮闘する山口さん。「日本では自動車のレスキューは当たり前だと思う人が多いが、ここではすごく感謝してくれる。その時の心からの笑顔が本当にやみつき。ご飯を用意してくれていたり、一緒に記念撮影をすることもある」と笑う。

「日本式」の朝礼を行うSATの社員

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