口ぐせは「ヤーバーデー」、ミャンマー人は遅刻に寛容!

カフェ店員のウェイ カン ソウさん(右)とテッ カイ ウーさん(左)。ミャンマー・ヤンゴンで撮影

「クインローパー(ごめん)! 1時間遅刻した!」

「ヤーバーデー (大丈夫)」

「ガッペイ(渋滞)だったよ」

ほかの途上国と同様、ミャンマーでも遅刻は日常茶飯事だ。待たされた人は、「ヤーバーデー」と言って、遅れた相手を許す。遅刻について、ヤンゴンのダウンタウンで老若男女25人に聞き込み調査したところ、21人(84%)が「遅刻した相手は許せる」と答えた。

「早く着いた方がいいけど(遅刻しても)大丈夫。待てば来るのか、待っても来ないのか分からない時はきついけれど」と話すのは、ヤンゴン市内にあるおしゃれなカフェ「the phayre’s」の店員、テッカイウーさん(27) 。同じカフェで働くウェイカンソウさん(27)は「仕事に遅れる場合、連絡があれば許せる。遅刻には理由があるし、自分も遅刻するかもしれないしね」と説明する。ホテル従業員のひとりは「内心穏やかでない時もあるけれど、ほとんどの場合は許してしまう」と語る。

■日本企業で「5分10円」の罰金も

ヤンゴンで起業して2年になる日本人起業家は「(ミャンマー人から)朝10時に行けると聞いていたのに、夕方5時になっても来ず、電話したところ『すぐ行ける』と言って夜7時にやっと来たことがあるんだよ」と口を尖らせる。ミャンマー人とビジネスをする際、最も困惑するのが「時間の意識」の違いという。

従業員が始業時間に遅れることについてこの日本人起業家は「うちの会社では、遅刻した社員は5分遅れるごとに罰金100チャット(約10円)を払うのが決まり。たまったお金を使って、社員みんなで食事に行く。社員は楽しみながら遅刻した人をからかい、社員の遅刻も減った」と語る。

■週2回の遅刻なら許容範囲

ミャンマー人の口ぐせは「ヤーバーデー」だ。時間に遅れたときはもとより、失敗したときもヤーバーデーと言って、“過ち”を気にしないようにする。「『ヤーバーデー』とミャンマー人は1日に10回以上は言っている」とヤンゴン在住の日本人は言う。

インタビューしたミャンマー人たちは一様に、「一人が遅れても、ほかの人が頑張ればいい」「いつも遅れるのはだめだけど、週2回程度ならヤーバーデー!」「1時間程度なら遅刻しても仕方がないと許せる」などと広い心で遅刻を受け止める。

■ワークスタイルの変化でどうなる?

一方で、「遅刻は許せない」と答えたミャンマー人も25人中4人いた。「タイムカードがあるから遅刻はほとんどない。電話一本あれば許すが、なければ注意する」(物流業者)、 「店を開けてお客さんが来ても、社員がまだ来ていないとなると、お客さんに迷惑がかかってしまう」(小売業者)、「(自分の)子どもが遅刻する場合、病気になったときは別だが、それ以外は注意する。それが子どものためだ」(喫茶店従業員・二児の母)といった意見も聞かれる。

ミャンマーでは、民主化の旗手アウンサンスーチー氏率いる国民民主連盟(NLD)政権が誕生したばかり。アジア開発銀行(ADB)によると、2016~17年度の経済成長率は東南アジア諸国連合(ASEAN)トップの8.4%に達する見込みだ。民主化政策と経済改革を追い風に経済が発展し、ミャンマー人のワークスタイルも変化していくだろう。ミャンマー人が遅刻に寛容でなくなったとき、この国はどうなっているのか。