国際協力NGOのネットワーク団体「動く→動かす」の稲場雅紀事務局長はこのほど、市民ネットワーク for TICADが主催する「みんなのTICADフォーラム」で、「持続可能な開発目標」(SDGs)と先進国の関係をテーマに都内で講演した。このなかで稲場氏は「SDGsの達成には先進国の努力が不可欠だ」と強調した。
SDGsの最大の特徴は、途上国だけではなく、先進国も対象にしていることだ。SDGsは「あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる」「包括的かつ持続可能な経済成長、およびすべての人々の完全かつ生産的な雇用とディーセント・ワーク(適切な雇用)を促進する」などの17の目標(ターゲットは169)を定める。
目標10の「各国内および各国間の不平等を是正する」や、目標13の「気候変動およびその影響を軽減するための緊急対策を講じる」は途上国と先進国に共通する課題だ。稲場氏は「SDGsは日本を含む先進国も実施する必要がある」と語る。
SDGsを達成するために不可欠な資金を調達する際にも、先進国の努力が欠かせない。2015年7月に国連が採択した「アディスアベバ行動目標」は、2016年以降の途上国の開発資金戦略を規定。「先進国は国民総所得(GNI)の0.7%を政府開発援助(ODA)に充てる」と改めて明記した。だが2014年時点で日本はGNIの0.19%、米国(0.19%)、フランス(0.37%)と、先進国のほとんどが達成していない。
SDGsを達成するため先進国は、ODAと民間資金に加えて、途上国の資金も動員したい考えだ。だが、途上国の国内資金を確保するための国際的な税制度は存在しないのが現状。途上国の税制度をめぐっては近年、多国籍企業とアフリカ政府による税逃れが大きな課題となっている。アフリカ連合(AU)の調査によると、税逃れなどによりアフリカから不正に流出する資金は毎年500億ドル(約5兆5000億円)に上るという。
稲場氏は最後に、「2015年が達成期限だったミレニアム開発目標(MDGs)のように、先進国が途上国に援助をしておけばいいという時代は終わった。これからは持続可能な世界を実現するため、先進国も一緒に努力しなければならない」と講演を締めくくった。
SDGsはMDGsの後継として2015年9月、国連が採択した。SDGsの17の目標のうち、1~6はMDGsが定めた「貧困の削減」を踏襲している。MDGsは途上国を対象に「貧困の削減」や「環境の持続可能性確保」など8つの目標を定め、まずまずの効果を上げた。その一方で、温室効果ガスの排出量は世界中で増大するなど、先進国にも共通する課題が残った。