「ルワンダ人と対等なビジネスで貧困解消を」、早稲女がアフリカファッションブランド「アリゼティ」立ち上げ

ルワンダ人テーラーと根津朋子さん(右)。アリゼティとは、スワヒリ語で「ひまわり」の意

■1着4000円からオーダーメイド

「貧困をビジネスで解決したい」。早稲田大学4年生の根津朋子さんが1月に立ち上げたアフリカファッションブランド「アリゼティ」が好評だ。ルワンダ南部の街フイエの市場から仕入れた鮮やかなアフリカ柄の布からオーダーメイドでワンピースなどを作る。1着の値段は4000~5000円と、ターゲットとする20代女性を意識した 。これまでに20着の注文が入っている。

アリゼティの注文・発注フローはユニークだ。3カ月ごとに注文をまとめ、フイエに留学中の日本人大学生に服の種類やサイズ(顧客自身が寸法をとる)をフェイスブックメッセンジャーで伝える。

ルワンダ側の日本人大学生がその後、市場に50人ほどいるテーラーのなかから上手そうな人を“品定め”し、裁縫を依頼する。交渉が成立すると、テーラーは手際よく布を断裁し、3日から1週間で完成させる。完成品の写真は、ルワンダから根津さんに送られ、顧客に確認し、問題がなければルワンダから日本に空輸する。

服1着の価格の内訳をみると、布の購入費、テーラーに支払う裁縫代、送料が約3分の1を占める。残りの3分の2がアリゼティの利益で、活動の継続資金に充てている。

■アフリカ3カ国でインターン

根津さんは長崎市出身。戦争をなくす活動に興味があり、早稲田大学では平和学ゼミに入った。ところが勉強するうちに、戦争をなくすこと以外にも問題があると考えるようになった。そのひとつが「途上国の貧困」だった。

漠然としたイメージだった貧困を深く考えるきっかけとなったのは大学2年生だった2013年の夏。ケニア西部の町キタレにある私立学校でボランティアをした際に、13歳くらいの生徒たちに貧困の実態をアンケートした時だ。「(学校に通っているが)給食しか食べられない子がいると知って愕然とした」

根津さんはこの時ホームステイしていたが、「貧困を自分たち(アフリカ人)で解決していきたい」と語るホストファミリーの姿勢に共鳴したという。「“かわいそうなアフリカだから買ってあげよう”という上から目線ではなく、アフリカ人に対してもっと対等な支援はないか」。根津さんはその手段としてビジネスを選んだ。

2013年の夏にビジネスを始めようと決心したが、具体的なプランはなかった。そこで根津さんは2015年に休学し、インターンをするためにアフリカに渡った。最初の半年はタンザニアとモザンビーク、その後の3カ月はルワンダで働いた。

「タンザニアで、カラフルな布をまとい、いきいきとしている女性に魅了された。この布を日本人のファッションに合うものにしたい。洋服にしてみよう」。根津さんはこの時、アリゼティのビジネスを思いついた。ルワンダの北部でインターンをしながら、日本の友人へのお土産と称して試作品をルワンダ人のテーラーに頼んで作り、売り出す服の種類を決めた。

市場の一角には50人ほどのテーラーが集まり、顧客から洋服の注文を受ける(ルワンダ・フイエ)

市場の一角には50人ほどのテーラーが集まり、顧客から洋服の注文を受ける(ルワンダ・フイエ)

■「失敗したら代金は払わない」

ビジネスを立ち上げて4カ月。根津さんをいま悩ませているのは、ルワンダ人テーラーが作った服が、根津さんが伝えたイメージと全く違うトラブルが1カ月に1回発生していることだ。「失敗したら代金は払わない。3回失敗したら二度と取引しない、と約束させている」と、根津さんはテーラーに対して一切の妥協を許さない。

「テーラーたちは、初めは『知らない中国人が注文してきた』としか思っていないようだった。だが私は一度にテーラー5人に注文するので、このビジネスの噂がテーラーの間で広まった。ルワンダで発注して1カ月半後には『私はもっといい服を作るわ!』とテーラーから売り込みがあった」

1人のテーラーには1つのオーダーしか出さない、と根津さん。テーラーの間で不公平感が出ないようにとの配慮からだ。「でもまだ始まったばかりだし、テーラーの貧困を削減できるかどうかはわからない」と本音を漏らす。

ただ根津さんの「かわいそうなアフリカ人を支援してあげるではない、対等な取引スタイル」はテーラーの労働意欲と技術向上に結びついているのは確かなようだ。アリゼティは近い将来、アフリカの布を使ったバッグや小物も売り出す計画だ。「試作品を作ってもらうなど、テーラーを教育しているところ」と根津さんは次のステージを見据えている。