「思い込みがイスラエルをレイシズム(人種差別主義)にさせ、パレスチナへの物資搬入を制限するガザ封鎖や、土地を奪う入植行為を引き起こす」。イスラエル自治区ガザ地区の悲惨さを伝えようと京都を中心に講演する岡真理・京都大学大学院教授はこのほど、都内で開かれた「パレスチナの今日―西岸・ガザの占領から50年、ガザ戦争から3年―」(主催:NGOパルシック)に登壇し、こう話した。岡氏によれば、イスラエルはパレスチナ人の一部(テロ行為)だけを報道で目にし、パレスチナ人を「危険な民族だ」と判断。レイシズムに陥っているという。
講演の中で岡氏は、イスラエルはパレスチナ人を自分たち(イスラエル人)に危害を加える民族だと思い込んでいる、と繰り返し指摘した。イスラエル国内では、パレスチナ人による投石やテロ行為がテレビなどで大きく報じられる。食料不足で困窮するパレスチナ人などは注目されず、イスラエル人にとってパレスチナ人が本当の姿よりも「野蛮」に見えてしまっているという。岡氏は「イスラエルがレイシズムを抱くことで、ガザ封鎖や入植行為を行ったり、それをやめたりしない」と指摘する。
イスラエルは2007年以降、ガザ地区を完全封鎖。ガザ地区に向かう建築資材、食料、医薬品、ガス、ガソリン、水など、生活物資の搬入を制限してきた。「(こうした措置から)ガザに住むパレスチナ人の健康は脅かされている」と岡氏は警鐘を鳴らす。
食べ物が十分にないため栄養失調や病気にかかる。それを治すための薬もない。空爆で破壊された浄水施設は再建できず、生活排水も処理されていないから、地下水の汚染が深刻になる。生活インフラが整っていないガザ地区には現在185万人が暮らす。
パレスチナ自治区の別のエリアであるヨルダン川西岸地区では、イスラエルの入植行為が290万のパレスチナ人の生活を苦しくさせている。イスラエルは、パレスチナ人が保有するオリーブ畑や家屋を破壊し、土地を収奪。そこにイスラエル人が住む家を建てているからだ。
「イスラエルによるガザ封鎖やヨルダン川西岸の入植行為といった構造的暴力は、パレスチナ人が人間らしく生きることを妨げている」と事態の深刻さを訴える岡氏。今後の打開策として「第二次世界大戦でナチス・ドイツがユダヤ人(現イスラエル人)に対してやったことを、今度は自分たち(イスラエル人)がパレスチナ人にしている、とイスラエルは気づくべき」と語気を強めた。