中部アフリカのブルンジで、養蜂ビジネスを通して紛争被害者の自立支援に取り組む団体がある。元子ども兵の社会復帰支援に取り組む日本のNGO「テラ・ルネッサンス」(京都・四条)だ。同団体の小川真吾理事長は「我々の支援地域で採れる甘い蜂蜜を生かし、紛争被害者の自立を目指したい」と意気込みを語る。
■糖度82.6%!
テラ・ルネッサンスが活動するのは、ブルンジ北西部にあるムランビヤ県キガンダ村。ここには粘土質の土が豊富にある。粘土質の土は保肥力が高く、良質な蜂蜜が採れる蜜源植物が育つ。
この村で採れた蜂蜜を日本に持ち帰り分析したところ、糖度は82.6%もあった。小川氏は「糖度が80%を超える蜂蜜は完熟蜂蜜と呼ばれ、栄養価が高い。ブルンジ国内で売られる蜂蜜の多くは糖度が70%台なので、他の製品と差別化できる」と期待を込める。
キガンダ村で採れた「アマホロハニー」(アマホロは平和という意味)は実際、売れ行きの見通しも明るい。キガンダ村の紛争被害者がムランビヤ県で2016年1~3月、500ミリリットルのアマホロハニーを300個、約3ドル(約320円)で試験的に販売したところ、すべて売り切れたという。
ブルンジ国内で販売される蜂蜜の多くは500ミリリットルで3~4ドル(320~430円)だ。アマホロハニーと比べ、大きな価格差はない。小川氏は「市販の蜂蜜は水を混ぜ、かさ増ししているものがほとんど。蜂蜜が容器から漏れている粗悪品もある」と問題点を指摘する。
「試験販売では、紛争被害者自身が広報から販売までをすべてやった。最終的にはキガンダ村だけで持続的に収入を確保できるようにしたい」と小川氏。今後はアマホロハニーを量産し、販路を拡大していく予定だ。
■森を守る!
「紛争被害者を自立させるためにはブルンジの森を守る必要がある」というのが小川さんの持論だ。ブルンジでは近年、環境破壊が深刻化している。国連食糧農業機関(FAO)の統計によると、同国の森林面積は1990~2010年の20年で46%も減った。1993~2006年の内戦や、高い人口密度に伴う過度な森林伐採が原因だ。
2014年2月には首都ブジュンブラで大規模な洪水が発生し、50人以上の犠牲者を出した。ブルンジ政府は森林保護の重要性を認識し、森林の伐採を法律で禁止するなど対策に乗り出している。クリスマスツリーにも木の使用を禁じるという徹底ぶりだが、効果は薄いという。「環境破壊が進めば、質の良い蜂蜜が採れなくなる。結果的に紛争被害者の自立は難しくなる」と小川氏は不安を口にする。
こうした現状を受け、小川氏は2015年12月から8回、キガンダ村の若者300人を対象に環境ワークショップを実施した。「養蜂には豊かな自然が必要不可欠。蜂蜜を生産することで、紛争被害者が『森を守ろう』という意識を持ってくれると信じている」(小川氏)
テラ・ルネッサンスは2015年4月からブルンジで支援を開始。元子ども兵や最貧困層などの紛争被害者約1000人を対象に、2018年までの3年間で、養蜂や製品ラベリング、販路拡大などのスキルを向上させたい考えだ。「甘い蜂蜜はキガンダ村が持っている貴重な資源。この資源を上手く生かすことで問題を解決できる」と小川氏は青写真を描く。