カンボジアで収入アップの鍵となるのは語学力――。カンボジア・シェムリアップの寺子屋には、社会人が外国語を習得するためのコースがある。プレ・プロンブロ・パゴダの寺子屋では約5ドル(約510円)の月謝で平日1時間の授業を受けられる。選択できるのは英語、タイ語、スペイン語、日本語の4つ。仕事上のスキルアップを求めて、平日の昼過ぎにもかかわらず、カンボジア人7人が英語の授業を受けに来ていた。
日本語を習得したことで、生活が変わったのは、20代の女性モリ・ミンさんだ。彼女は旅行会社に入社して6年目の現在、日本人向けのツアーガイドとして、観光客の多いシーズンで300ドル(約3万600円)を稼ぐ。カンボジアの最低賃金140ドル(約1万4200円)の倍以上だ。
彼女は「高校時代は生活が困窮し大変だった」と振り返る。高校を卒業後、シェムリアップにある山本日本語学校で1年間日本語を学んだ。山本日本語学校は、仕事を求めるカンボジア人に無料で日本語教育を提供している学校だ。
日本語を習得してから働き出したのが今の会社だ。「学生時代からガイドになることを考えていたわけではないけれど、言語スキルさえあればできる。生活のためには最良の手段だった」。カンボジア政府によると2015年、シェムリアップを訪れる日本人観光客は前年比10%減少した。彼女はこの現状に対応し日本語以外の言語を身につけるべく、プレ・プロンブロ・パゴダの寺子屋で英語を学び始めた。
カンボジアの公立学校では、一般的に二部制を採っており午前に授業を受ける生徒と、午後に授業を受ける生徒に分かれている。そのため外国語の授業に十分な時間が取れないのが現状だ。モリさんは「カンボジアで良い職を見つけるのに言語力は必須だ。でも私の通った中学、高校では週に2時間しか英語の時間がなかった。職を見つけるためにどうにか日本語学校に通った」と語る。
言語スキルを武器に、高校卒業後になったバイクタクシーの運転手からトゥクトゥクの運転手、そしてタクシーの運転手へ転身したのは ホン・ハクセンホットさんだ。
彼の月収は、バイクタクシーの運転者時代が80~150ドル(8160~1万5300円)、トゥクトゥクの運転者時代が100~300ドル(1万200~3万600円)、タクシーの運転手となった今は600~900ドル(約6万1200~9万1800円)と、15年間で月収が6倍になった。クメール語に加えて流暢な英語とカタコトの日本語と学び始めたタイ語を操る。「タクシーの乗客の80%は外国人。言語スキルがタクシーの運転手には必要だ」
高校時代からタクシーの運転手を目指し英語を重視して学んだ。「タクシーの運転手は自由で簡単で遠くまで行ける」というのが理由だ。
バイクタクシーの運転手からタクシーの運転手になった間で収入は右肩上がり。タクシーとして使う中古車のホンダ・レクサスを1380ドル(140万760円)で自ら購入した。
カンボジア政府によると、2015年、シェムリアップを訪れるタイ人の観光客は前年に比べ9%増えている。彼はこの現状を捉えてタイ語を重点的に今、学んでいる。