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ベンチャー企業を対象とする「持続可能な開発目標(SDGs)を戦略にスタートアップの海外展開を推進するプロジェクト」(主催:トーマツベンチャーサポート)が、東京・青山で開催された。慶應大学大学院政策・メディア研究科の小坂真理特任助教、途上国の生活を向上させる技術を届ける一般社団法人コペルニク・ジャパンの天花寺宏美代表理事、働く女性に職業紹介するWaris(東京・港区)の田中美和共同代表が登壇。デロイトトーマツコンサルティングCSR・SDGs推進室の山田太雲氏と佐藤和直氏の2人も加え、日本のベンチャー企業がSDGsをどうとらえることができるのか意見を交換した。BOP(年間所得が3000ドル=約30万円の貧困層)ビジネスを立ち上げた日本企業のほとんどは、味の素やユニ・チャームなど大企業となっている。
■資金不足が足かせ
「日本の技術は途上国で求められている。だが日本のベンチャー企業と現地ニーズを結びつける機会はなかなかない」。こう語るのは、コペルニク・ジャパンの天花寺代表理事だ。
コペルニク・ジャパンは、革新的なテクノロジーを途上国に届け、途上国の課題を解決する活動を行っている。途上国のニーズも踏まえ、コペルニクが途上国に届けたいと思う技術、または各地の革新的なテクノロジーを、まず現地パートナーの市民団体に紹介する。販売する技術が決定すると、ビジネス研修を受けた現地の女性たちが「テクノロジー・エージェント」になり、訪問販売や売店の一部を利用した店頭販売を行う。女性たちの収入が向上し、自立に役立つ。
東ティモール・アタウロ島に、電気を使わず簡単に汚い水を浄化できる浄水器を届けるなど、コペルニク・ジャパンは2010年の設立から6年間で25カ国35万人の生活に役立つ製品を届けてきた。
コペルニク・ジャパンが橋渡しするベンチャー企業は、途上国を含む日本以外の会社が圧倒的に多い。日本企業はほとんどないという。この理由について天花寺代表理事は次のように指摘する。
「途上国向けのビジネスを始めるには、それに見合った技術やサービスの開発が不可欠だ。日本で売る製品をそのまま輸出しても、途上国の環境やニーズと違えば売れない。そのため、大企業と比べて技術開発への投資に困難が伴う中小企業には大きな障壁が立ちはだかる」
日本のベンチャー企業がSDGsを意識できない理由についても「企業の技術が途上国を助けると認識させる機会が少ないからでは」と天花寺代表理事は分析する。
コペルニク・ジャパンは、途上国のニーズを十分に調査した上で、企業の技術・サービスとのマッチングを進める。このため企業のウォンツとの乖離も少ないという。また、現地にその技術・サービスを導入した後、生活がどう改善されたかインパクト評価も実施している。
■地方にもSDGsの語り場を
「東京をはじめとする都市圏に比べ、地方ではSDGsの知名度が低い」と指摘するのは小坂特任助教だ。
小坂特任助教は、企業を対象に、SDGsのイロハをテーマに各地で講演している。「東京でSDGsのイベントを行うと多くの人が集まるが、地方都市ではSDGs自体を知らない人が多いため、SDGsのイベントに人があつまりにくい」と言う。
講演が終わった後に、地方の企業が集まって議論できる「SDGsビジネスネットワーキング」を作りたい、と前向きな意見が聞かれることもある。だが現時点ではまだ、実現できていない。
Warisの田中共同代表は、SDGsの目標8「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の促進」を実現するため、日本はもっとフレキシブルな働き方を認めるべきだと訴える。2015年度の厚生労働白書によると、第一子出産前の女性就業率は70%だが、産後復帰率は27%と低い。「育児や介護と仕事との両立ができるよう、企業はリモートワークなどの柔軟な働き方を取り入れるべきだし、フリーランスのような正社員に限らない働き方の多様性についても大切にするべき」と提案している。